2015/03/02

愉楽 閻連科(えんれんか)

閻連科(えん れんか)はフランツ・カフカ賞をとった中国の作家。この賞を取るのはアジアでは村上春樹に次いで二人目。新聞の書評などを見る限りとても評価が高く期待できる。500ページ近くある分厚い単行本だが、読み始めればすいすい進んでしまう。そんな力がある。

表紙からしてちょっとショッキングだ。この謎の表紙が何を表現しているのか、注意深く意識しながら読み進める必要がある。
そして文章は真夏なのに雪が降る中国のある村から始まる。この受活村は障害者だけが住む伝説の村で、かつて文化大革命の際には秘境過ぎて政府の支配の及ばない村だったのだが、やがて一人の女性の影響で中国社会に入社することになる。

その村が属する県の県長は並々ならぬ野心家だった。上昇志向の強い県長はある日、とんでもないことを思いつく。レーニンの遺体を買って世界中から観光客を呼べば、県の財政が潤ってもっと出世できると考えたのだ。
しかしそのためには大金が必要となる。その資金をどうやって稼げばいいかを考えた県長は、受活村の障害者たちによる雑技団を結成し資金を稼ぐことを思いつき、それを実行する。貧しい村の障害者たちは絶技を持ったものが多い。

本文中の差別的な用語を敢えて書くが、ちんば(片足に障害がある)なのに完全人(障害のない健常者のこと)より遠くに飛べるもの。
めくらだが羽が落ちる音を聞き分けられるもの、その他色々な能力を持ったおし、つんぼなど超絶的な能力を持つ障害たち。この雑技団は大流行し凄まじい金を稼ぎだす。そしてついにレーニンを遺体を買う資金が貯まったのだ。

レーニンの遺体購入資金を貯めた県長、雑技団によって村での1年分の収入を数日で稼ぐ障害者たち、どちらもハッピーなのだが物語はやがてだんだんと陰湿な方向へ向かう。
権力欲の強い政治指導者たち、完全人の障害者たちに対する嫉妬、稼いだ金へ執着する障害者たち、それぞれの思惑が複雑に絡み合い、中国がその内に孕む矛盾が浮き彫りになる。
経済を開放したが、政治的には社会主義。そんな中国の矛盾。

資本主義が共産主義に勝利したのは歴史が証明したが、この物語を読むとどちらの主義が優れているかという単純な二元論で世の中を測ることはできないと分かる。
なぜなら、受活村の障害者たちが一番幸せだったのはいつだったのか?社会主義の支配下に村がある時か、それとも興行で大金を稼いでいる時なのか、それ以外なのか、この問いに対する答え、すなわち「慎ましく生きること」が最良だと、この物語から読み取れると思うからだ。

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このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
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