2015/07/06

食べ物の好き嫌いは存在しない「オーガニックラベルの裏側」

「ヨーロッパのオーガニック食品」という言葉を聞くと、あなたはどういうイメージを持つだろうか。ヨーロッパのそういった取り組みは進んでいて体と環境に優しい、というイメージを迷わず持つなら、あなたは見事に企業のイメージ戦略にやられている。そういう人にこそ「オーガニックラベルの裏側」を読んで欲しい。こういった本をよく読み考える癖をつければ、思考停止に陥らずに済む。

目次

  • 思い込みが生むオーガニック食品の罠
  • 食品のハイブリット
  • 食べ物の好き嫌いは存在しない

思い込みが生むオーガニック食品の罠

有機食品とか有機栽培というと、あなたはどのようなイメージを抱くだろうか。鶏が草原をぽかぽか太陽の下を歩く牧歌的な風景だろうか。あるいは農薬を使わない柑橘のイメージだろうか。人それぞれ「有機なんとか」という言葉からイメージするものがあるだろう。問題はそのイメージがどこから来ているか?だ。多くの場合は、それは企業の広告である。メディアの影響で無意識に刷り込まれた広告が定着し、そういうイメージだと思い込んでしまう。しかし、イメージしか知らないということは実体を知らないということを意味する。恐ろしいことに、広告と実体が乖離していることに気づかないのだ。盲目的にでスーパーなどで有機食品を買う人の99%はそんなものだろう。

先進のヨーロッパのオーガニックでさえ実態はひどい

本書が暴く有機食品の生産現場の実体は広告のイメージとはかけ離れたものだ。例えば有機をうたった鶏が実際はどのように飼育されているか。これは家畜虐待と言えるレベルで飼育されている。鶏は飼育環境が悪いとカニバリズムが発生する。その一部を引用する。

カニバリズムは従来型の養鶏や条件の悪い有機養鶏で発生する現象で、最も頻繁に現れる行動障害の一つ。鶏は互いに首、背中、尾、そして尻まわりの羽をつつきあう。その結果、体表の広範囲にわたり羽がむしり取られ、皮膚が露出するため感染症が発生しやすくなる。不足する栄養を補うために、羽が食べられてしまうことが多い。群れの上下関係が確率していない場合もカニバリズムの原因となる。群れが大きくなりすぎると、自然な形で社会構造が形成されないため、ストレスが高まり、行動障害を引き起こす

コンラート・ローレンツの「ソロモンの指輪」で鳩のくだりがある。カゴに入った二羽の鳩。攻撃の抑制機能と防御機能を持たない彼らは、ストレスがあると同じかご中の鳩をつっつくのだ。
狭く暗い鶏舎で大量の鶏がストレスにあえぎ、互いに攻撃し合って皮膚がむき出しになっている。このようにストレスを感じた鶏の肉は美味しくない。美味しくないだけならまだいい。皮膚がむき出しになり傷だらけの鶏には、傷をなおすための薬が投与されるだろう。
その薬はやがて、それを食べる人の口に入る。。。著者のジャーナリストがこういう鶏舎を取材しようとしたら、その企業の人に脅迫まがいのことをされたらしい。
ヨーロッパの先進イメージとは逆に、現実にこういうことがあるのだ。

ハイブリット

ハイブリットと定義された鶏がある。ハイブリットがどのようにオーガニックでないのか。これも定義を引用する。

ハイブリット鶏は、食品業界では「茶色い羽の有機種」と宣伝されている。そうした言い方は誤解を生むが、残念なことに消費者意識の操作という点では功を奏しているようだ。〜中略〜そもそもそれは動物の"種"ではない。肉付きよくするために農企業が設計したハイブリット系統だ。

肉付きをよくするために、色艶をよくするために、形を安定させるために、生産量や品質を一定にするために、、、、様々な〜のためにを実現するのに、生産者は肉とか野菜とか、あらゆる食品の原料を操作している。

特定の性質を持つ近親交配系をつくりだす。しかし、そうした系統は近交弱勢と呼ばれる現象によって生産力が弱くなる。そのような近親交配系をほかの近親交配系とかけ合わせることで、いわゆるハイブリットが生まれる。親系統とは異なり、通常ハイブリットは成長が早く、生産性が高い。

〜 中略 〜

だが、そうした性質が現れるのは第一世代に限られ、ハイブリット交配で生まれた動物や植物は繁殖することができない。若い個体あるいは種子を農企業からそのつど購入しなかればならない。つまり、ハイブリットを生産する企業に依存せざるをえなくなる。動物と植物の育種は農家の手を離れ、今では完全に大企業に委ねられることとなった。
p55

機能性食品は政府の怠慢

最近日本で始まった機能性食品も推して知るべしだ。

4月から食品表示のルールが新しくなる。最大の柱は「機能性表示食品」制度の導入だ。科学的根拠を国に届け出れば、事業者が自らの責任で、健康にどんな効果があるかをうたうことができる。
「すっきり」といったイメージではなく、「おなかの調子を整える」などの具体的な表示があれば、消費者が自分にあったものを選び、体調管理に生かすのに役立つだろう。生鮮食品も対象であり、市場の拡大への期待も高い。

ただ、新しい表示は国の事前審査を必要としない。 (日経新聞 2015/3/26 社説より)

日本人のダイエット、メタボなど健康食品への関心はとても高い。従って健康なイメージをを与えられた商品は売れやすい。機能性食費の表示は、何が何でも経済成長率を上げたい安倍政権が成長率を上げるために規制を緩和したのではないだろうか。
審査が不要なら企業は何でもできる。企業や政府が都合のいいように情報を歪めるのだ。

食べ物の好き嫌いは存在しない

食べ物に好き嫌いがある場合、その食材の新鮮で本当に美味しいものを食べたことがないだけ、というのが私の見解だ。遠くから何日もかけてトラックで揺られて運ばれてきた魚が美味しいわけがない。野菜でも肉でも同じことが言える。
まっとうな食材を使っていれば本来は何でも美味しいのだが、特に都会生活しか知らないと、そういうことが分からない。

クリスマスの時期になると、調理された七面鳥がよく売られている。不自然に大きさと色が似通っているのに疑問を持ったことはないだろうか。

七面鳥の飼育に限界を感じている有機農家もいる。バウク(※生産者の名前)は七面鳥から手を引く理由を、真にエコロジカルに、習性に即して正しく飼育することを市場状況が不可能にしているからだと説明する。

〜中略〜

七面鳥は本来、北アメリカ大陸の荒野に生息していましたが、中央ヨーロッパは湿度が高くて気温も低い。つまり生きるのに適した環境ではないのです。だから抗生物質が必要になる。五年間、七面鳥を有機飼育してきましたが、六度も抗生物質を使用せざるをえませんでした。
p69

小さい時から構成物質漬けの鶏肉や、遺伝子組み換えの野菜とかを食べ続けていればアトピーになったり(本人はならなくても子供がなったり)、好き嫌いが増えるのは自明の理だろう。だからなるべく企業に都合のいい食品を摂らないようにするしかない。

著者はそれは可能だと提言する。眠れる巨人たる消費者の意識で変えられると。そのための具体的なかつ様々な提言で本書は閉じられる。

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このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
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