2016/03/06

目の見えない人は世界をどう見ているのか

1/24の朝日新聞の佐々木俊尚さんによる書評に「目の見えない人は世界をどう見ているのか」という本の紹介があった。書評を読んだら非常に面白そうだった。書評から一部を以下に引用する。まさにコペルニクス的転換というべき一文。

目の見える人は、逆に視覚に頼りすぎているため、認識に身体性が欠落しているという見方もできてしまう。

書評のこの一文を読んで本を買うことにした。ということで読んだら非常に面白い。著者の伊藤亜紗氏の巧みな文章で序章から引き込まれてしまう。著者は「目の見える人が目をつぶっても、それは視覚の遮断でしかなく、それはいわば正の状態からの引き算だ。

しかし、目の見えない人は、体が視覚抜きで成立している。」と説く。そのことが見方によってはプラスに働くこともある。その例を本文より引用する。以下の引用は、中途失明した方の言葉。

見えない世界というのは情報量がすごく少ないんです。コンビニに入っても、見えたころはいろいろ美味しそうなものが目に止まったり、キャンペーンの情報が入ってきた。でも見えないと、欲しいものを最初に決めて、それが欲しいと店員さんに言って、買って帰るというふうになるわけですね。

現代はむき出しの資本主義社会。誘惑は至るところにある。それによって時間やお金を無駄遣いしてしまう。目の見えない人は、むろん個人差はあろうが、そういう誘惑から解放されている。

仮に一人の人間の持つエネルギーの総量や問題の処理能力が変わらないとすれば、目の見えない人は視覚からの情報が遮断される分、脳に余裕があることになる。コンピューターのメモリーが豊富で処理が速いのと同じようなもの。

そして目の見えない人、その余裕を他のことに向けられる。例えばピアニストの辻井伸行さんの演奏を思い浮かべてみると、目が見えないハンディなど微塵も感じさせない、素晴らしく輝いた音を出している。
あくまで個人的な想像だが、彼の場合、視覚が遮断されて余裕ができた意識が聴覚に向けられている。だからあれだけの、とびきり繊細な音が出せるのだと思う。

このように思いがけないことに対する「気づき」を訓練できるのが本書の有用なところだ。内容が面白いだけではない。
本書を通して目の見えない人の世界を追体験することで、他者が世界をどう捉えているのかを想像する訓練になる。これはビジネスで日頃「相手の立場になれ」とか「顧客視点で考えろ」などと言われている人や、マーケティングの勉強をしている人に有用だろう。

新書で気軽な値段で、内容は理解しやすい。ぜひ読んでみて欲しい。

このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
TwitterとFacebookとRSSで更新情報を受け取れます
RSS

最近のエントリー