2016/11/12

それなりに悲観的か?歴史が示すトランプ大統領の今後4年間の世界

「まさかのトランプ大統領の誕生。新聞やネットでは悲観論が多い。いったいアメリカは、世界は、そして日本はどうなってしまうのだろう」と不安に思っている方は多いでしょう。

トランプ当選について、知り合いのアメリカ人と話す機会があった。アメリカのわびしい未来に嫌味でお祝いを述べたら、そのアメリカ人は苦い表情でこう言った。「あんなやつ暗殺されて欲しい」。おう、やっぱりそうか。まっとうな感覚を持つアメリカ人の新大統領に対する反応はこんなものだ。アメリカでデモをしている人も似たような考えなのだろう。

面白いのはここからで、「じゃ、ヒラリーか?」と私がそのアメリカ人に聞くと、同じように苦い表情で「絶対に嫌だ」。なるほど、日本にいるとなかなか分からないが、アメリカではヒラリー・クリントンの不人気ぶりもすごいのだ。しかし日本人からすると「トランプよりクリントンのほうがましだよな〜」と思う人が多いのではないだろうか。

トランプについてはSNSを見てると、こんな意見もあるし、やっぱり落胆、失望が広がっている模様。アメリカ人だけでなくね。というわけで、この記事ではトランプ次期大統領の今後の4年間と、トランプが用いた大衆迎合のもたらす結末について少し書いてみる。

最初に結論を書く。アメリカは鳩山民主党時の日本のような混乱に陥る。ただ日本や他の国にはそこまで影響しないかも?こう考える理由を以下に展開する。

ポピュリズムを採用した結果、歴史上多くの国が滅んだ事実

トランプの手法は典型的なポピュリズム(大衆迎合)だ。彼は現状の生活に不満を抱いているWASPと呼ばれる典型的なアメリカ人(White Anglo-Saxon Protestant)はグローバル化などの影響で生活の苦しい人が多い。第二次大戦後にアメリカが最高の輝きを放った時代を懐かしみ、そういう時代に再びアメリカがなって生活がよくなることを期待している。トランプはそういう有権者の思いを徹底的にくすぐった。「もう一度アメリカを偉大にする」というトランプのキャッチコピーはそういう意味だ。

WASPがどれだけ不満を抱えているかはある数字に表れていた。それは死亡率。この問題について詳しくはサンケイビズの記事前例のない米白人中年の死亡率上昇に書いてある。記事から一部引用する。

薬物中毒や自殺、飲酒に関連した病気の増加が米国の白人中年の死亡率を押し上げ、中でも教育水準の低い白人層の死亡率が最も上昇

こういった層が増えているから、トランプ大統領誕生は必然だったと、フランスの歴史人口学者のエマニュエル・トッドは言っている。

さて、他にもトランプは有権者の支持・関心を得るために徹底して大衆迎合した。このポピュリズムという手法は別に新しいものでもなんでもなく、大昔から存在する。私の浅い知識では、歴史に登場する一番古いポピュリズムは2400年前。ギリシャのアテナイのこと。ちょっと大衆迎合の歴史についてお付き合いください。

古代アテナイのポピュリズムの事例

古代ギリシャの重装歩兵

古代のギリシャってイメージがあまり沸かないだろうけど、上の絵のような重装歩兵が軍隊の主力だった世界です。2400年前とはいえ、多くの人が想像しているよりずっと文明的な世界。古代のギリシャはたくさんの都市国家に分かれて互いに争っていた。とくにスパルタとアテナイは力が大きく、ギリシャ中を巻き込んで何十年も戦争していた。アテナイは直接民主制を採っていて、軍隊を指揮する将軍とか他国との外交交渉は民意で選ばれた人がその任を担ったのだ。

ある年のこと、勢いのあるアテナイはシケリア(今のシチリア)を植民地にするべく軍隊を送ることになった。民意は、新しい植民地をすっかり獲得した気になって熱を帯びていた。この戦争を記述したトゥキディデスの「歴史」にはこんな記述がある。

アテナイはシケリア遠征に沸き立ち、心中では遠征に反対でも、反対を表明すれば愛国心が欠ける人物と思われるのを恐れて沈黙した

このように植民地獲得に盛り上がった状態だから、将軍になりたい人は当然のごとく民意に沿うようなことを言う。「シケリアとの戦争に勝てばさらに生活が良くなるし、必ず戦争に勝てるぞ!」。そして莫大な費用をかけてアテナイの大軍はシケリアに遠征した。

で、結果はぼろ負けです。アテナイ艦隊は壊滅しアテナイを守る兵士もいなくなった結果、その後アテナイはスパルタ陣営に圧倒されることとなった。多く持っていた植民地を次々に失い二度と取り返せなかった。

古代に歴史上稀にみる最高の輝きを放ったアテナイは、その後二度と歴史の表舞台に立っていない。今のギリシャがEUのお荷物になっているのはご存知の通り。大衆迎合はろくな結果にならない。にも関わらず、今のチプラス政権は再びポピュリズムを採用している。人間てのは懲りないのです。

さて、次は古代のローマ帝国の例。

古代ローマのポピュリズムの事例

カラカラ浴場っていう名前くらいはご存知でしょうか。「カラカラ」というのはローマ帝国の皇帝の名前で、彼も人気取りの政策をした一人。今から約1800年前の人。当時のローマ帝国は、ローマ市民と属州民に分かれていて、属州民はローマ本国に税金を払わないといけない仕組みだった。またローマ帝国の軍隊はローマ市民でないとなれない。この仕組みがローマの力の源泉だった。ローマ市民はその身分を維持しようと努力し、属州民は頑張ってローマ市民になろうとした。

カラカラ帝は、この身分差を撤廃したのだ。その直後はカラカラ帝は空前の支持率を獲得した。問題はその後のことだ。力の源泉を失ったローマ帝国は、ローマ市民はかつてような誇りとやる気を失って、属州民は生まれながらローマ市民で、上昇意欲がなくなった。生活保護でだらしなく生活している人を思い浮かべるといいかもしれない。ローマ帝国は活気を失い経済が弱くなり、蛮族の侵入を許し滅んだ。

だいぶ単純化して書いたけど、大筋ではこんな感じ。ギリシャとローマの事例を見て分かる通り、大衆迎合は国を滅亡に導く。大衆迎合がろくな結果にならないということは、歴史のパターンを見る限りかなり高い確率で「そうだ」と言える。ここには挙げてないがヒトラーも大衆扇動で政権を握った。結果はよく知られている通り。で、トランプの話に戻ると、アメリカ大丈夫ですか?と心配になる。

向こう4年のシナリオ

とりあえずアメリカがそれなりにめちゃくちゃになるのはほぼ確実。日本も鳩山民主党の時めちゃくちゃになったけど、あんな感じだろう。もっとひどいことになるかな?好ましいシナリオはトランプは高齢だから就任してすぐに病死することだけど、トランプは酒もタバコもやらないそうなので、この線は厳しいか。あとは冒頭のアメリカ人の希望の通り暗殺されること。ちなみに今は韓国の大統領のほうが暗殺されそうな気がするが。

民主党にがっかりした数年前の日本のように、アメリカ人は今後4年間で結構くたびれるだろう。鳩ポッポは「最低でも県外」と沖縄の人を期待させたが、アメリカ軍基地は今も相変わらず沖縄にある。沖縄の人ががっかりしたのと同じような落胆がアメリカに広がる。4年後の東京オリンピックでは、疲れたアメリカから日本や他の国がメダルを獲るチャンスか?

ただ、1年もすればトランプは選挙活動中に言ってたことは全然実現できないと、支持した白人たちが気づくだろう。けっきょく現状に不満のある白人は何も変わらないのだ。そもそもアメリカの力が相対的に落ちているというのは大きなトレンドなので変わりようがない。資本主義経済は植民地がもうないから成長の余地がないわけで、アメリカも日本も中国もこの先の成長は厳しいのは同じ。そういうタイミングでたまたまトランプが大統領になっただけなのだ。

だからトランプ大統領でアメリカは振り回されるだろうが、他の国への影響はそこまでないのではないだろうか。というのも、相対的に力の落ちているアメリカは、他の国を一緒にひきずり落とすほどの元気はないと考えられるからだ。で、トランプの二期目は化けの皮がはがれて当選しないだろうから、アメリカは4年間しのげば、目が覚めるんじゃないかなぁ。

まとめ

  • ポピュリズムの結果アメリカの悪化は加速するが、悪化すること自体は元々の傾向
  • 今後4年間アメリカは、かつて鳩山民主党だった時のようなひどい状態になる
  • 世界中に迷惑をかけるほどの力はそもそもアメリカはもう持っていないから、日本や他の国への影響は軽微?

具体的にどう悲惨になるのかは、他にも色々な意見があるので色々読んでみてはいかがでしょうか。

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このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
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