2017/05/29

『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』 栗原康〈著〉

100年前の超肉食女子"伊藤野枝"の評伝。 伊藤野枝はアナーキストでウーマンリブな思想家。めっちゃ自由で過激な人生だった。

家が指定する結婚が嫌で嫁ぎ先から勝手に飛び出し自分の学校の先生であった辻潤と二児をもうけ、つぎにアナーキストの大杉栄と懇ろになり5児を生む。28歳の時点で子供7人がいるが、関東大震災の直後、憲兵に予防拘禁を理由に夫と一緒に捕まりリンチされ死んだ。こんな奔放な彼女だが熱心な勉強家だった。平塚らいてうの後を継いで『青鞜』の二代目編集長となり、著作もある。伊藤野枝が教養豊かであったことは彼女の文章から明らかだ。

そこでまた、貞操というものについて考えて見ましょう。

世の中が文明になるにつれて、最初平等であった人間と人間との間に階級ができ、権力が生まれ、道徳ができ、法律ができ、宗教が生まれて、風俗や習慣の上に大きな変動がでてきます。そして人間の生活が、一般にずっと規則だてられるのです。そして第一に規則だてられたものは、財産に対する権利です。所有権を所有することです。そして、この所有権の主張はもちろん女の上に充分に及びました。

蒙昧野蛮な人間の間では、女の所有者は自分の随意に、その女を他人に貸しもすれば売りもしましたし、また、客をもてなすのに女の体を提供するということさえもしました。しかし、もし持主の承諾なしに、他の男に接した場合、すなわち姦通は、実に厳重に罰せられました。

伊藤野枝「貞操観念の変遷と経済的価値 全集第三巻、269p

100年前の家制度における道徳というと、女は最初は父に、結婚してからは夫に仕えるのがよしとされていた。女に勉強は不要で裁縫や家事を上手くこなすのが求められた。伊藤野枝はそれにまっこうから抵抗した。勉強したい一心で14歳の時、福岡から東京にいる実業家の叔父に「勉強させて」と手紙を連日書いて、高等女学校の4年に成績トップで編入した。その学校で辻潤と出会い、卒業後は冒頭に書いたとおりの人生を送る。

敢えて伊藤野枝を一言で表現をするならば「頭のいい奔放な不良」といったところだろうか。頭がよくなければただの不良だし、頭がいいだけならただの優秀な人だが、伊藤野枝はそういった型を凌駕している。そのためこぎれいにまとまっている現代人にはかなり刺激的な本であることは間違いない。160ページくらいと短いので数時間で読めてしまうが、内容は、つまり伊藤野枝の人生は濃密。

このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
TwitterとFacebookとRSSで更新情報を受け取れます
RSS

最近のエントリー