2017/08/15

「戦前の軍部が日本を敗戦に追い込んだ」は神話だった 太平洋戦争に関していくつか読んだ本の備忘録

「A級戦犯は極悪人」、「戦前の軍部は日本を破滅に追いやった」など今日一般に信じられていることが実は神話だとしたら?

議論の分かれる内容に関して一冊だけ読んでも勉強したことに偏りがあるが、何冊か読むと多少は矯正され固まってくる。少なくとも複数の本に同じことが書いてあれば、それはある程度正しい知識とみなしていいだろう。特に、複数の立場から同じ趣旨のことが述べられていれば、その信頼性は高い。

太平洋戦争、日中戦争に関しては様々な言説があり書籍もたくさん出ている。そんな中で、とりあえずこの本を読んでおけば間違いないというものを紹介する。

  • 日米開戦の真実
  • 日米の衝突
  • アーロン収容所

日米開戦の真実 著者:佐藤優 小学館文庫

これは佐藤優さんの本なので間違いないです。文庫なのでお買い得だし、難解なところがないのでおすすめ。例えば今日一般に思われている以下のようなことに関して正しい知識が得られる。

  • 日本の軍部が暴走して勝ち目のない戦争に突入した
    これは事実ではない。アメリカが戦後の日本統治をしやすいように行った巧みな謀略
  • A級戦犯は極悪人である
    これも事実ではない。ABCは罪の区分であって罪の重さとは関係ない

お盆の時期の新聞には、戦争体験者とか語り部の経験談がたくさん出てくる。戦争がいかに悲惨かが書かれてあり、いずれの記事にも共通するのは「軍部の暴走でひどいめにあった」とか「国家総動員法で日常生活までがひどい状況だった」という趣旨のことだ。

こういう記事を読むと、「日本の軍部が暴走して勝ち目のない戦争に突入した」と思ってしまうが、こういう思いは事実と違うことが日米開戦の真実を読むと分かる。例えば以下の引用を読んでほしい。

国民が政府、軍閥に騙されて勝つ見込みのない戦争に追いやられたというのは、戦後になってから作られた神話である。この神話が作られる中で、日本人がもっていた中国を含むアジア諸国を欧米の植民地支配から解放するという大義は、日本の支配欲を隠す嘘だちおう”物語”が押しつけられ、その呪縛から未だにわれわれは逃れられずにいるのである。
p152

敵国を占領してハタと当惑するのは、昨日まで仇同士であった敵国人民と仲よしにならねばならないことである。日本を占領したアメリカ軍は、日本の国民とわだかまりなく仲よしになるために、軍閥という悪者をデッチあげたのである。「日米両国が仇同士にさせられたのは日本軍閥という悪者の仕業である。アメリカ軍は日本の軍閥と戦ったのであって決して諸君を敵としたのではない。
p154

つまり軍部が暴走したと、戦後72年も経った今なお我々は信じているが、それは神話だということが書かれている。アメリカは戦後のラジオ「真相箱」で東条英機がいかに国民を弾圧したかを51回にわたって流したのだが、それをみんな信じてしまい、その影響が強く残っているのである。

「日米開戦の真実」は上記に引用した一部分だけでも買う価値があるが、大川周明の「米英東亜侵略史」をベースに全編が書かれていて何度も読む価値がある必読の書。

日米の衝突 著者:ウォルター・ラフィーバー 彩流社

次に紹介するのは「日米の衝突」これはちょっと高いし分厚いので、読む人は限らられるだろう。太平洋戦争だけを取り上げているわけではなく、ペリーの来航から戦後の1990年後半までの日米関係が俯瞰してある。一人の著者の史観でまとめてあるのでぶれがない。

特筆すべきは著者がウォルター・ラフィーバーというアメリカ人であるということ。つまり日米関係に関して、日本の立場から日本を擁護するために書かれた本ではないのだ。「日米開戦の真実」と同じ趣旨のことも書かれていて、ある程度の公正さは担保されていると見ていい。強いてけちをつけるなら、東京裁判についての記述がほとんどないのが残念だ。

アメリカから見た日本がいかに異質な資本主義であるかというのが本書を読むとよく分かる。そんな風に思っている国が太平洋の対岸にあることは、日本にとって不運だったとしか言いようがない。太平洋戦争で日米が衝突したのも、貿易摩擦でもめたことも、自民党が一貫してアメリカにべったりなのも「そうだったのか」と納得できる。

アーロン収容所 著者:会田雄次 中公文庫

会田雄次さんというビルマで英国の捕虜になった人の体験記。シベリア抑留は報道などによってよく知られているが、ビルマで日本人が英国の捕虜になり、戦争が終結したのにもかかわらず2年も日本に帰還できなかったことはあまり知られていない。

この本を読むと、英国人がいかにアジア人を人として見ていなかったかがよく分かる。なんかもう、読んでいて腹が立ってくるのだ。それがよく分かる一節を紹介する。捕虜となった著者が女兵舎の掃除をする場面だ。

この女たちの仕事で癪にさわるもう一つのことがある。足で指図することだ。たとえばこの荷物を向こうへ持って行けというときは、足でその荷物をけり、あごをしゃくる。よかったらうなずく、それだけなのである。

その日、私は部屋に入り掃除をしようとしておどろいた。一人の女が全裸で鏡の前に立って髪をすいていたからである。ドアの音にうしろをふりむいたが、日本兵であることを知るとそのまま何事もなかったようにまた髪をくしけずりはじめた。部屋には二、三の女がいて、寝台に横なりながら『ライフ』か何かを読んでいる。なんの変化もおこらない。私はそのまま部屋を掃除し、床をふいた。裸の女は髪をすき終わると下着をつけ、そのまま寝台に横になってタバコを吸いはじめた。

入って来たのがもし白人だったら、女たちはかなきり声をあげ大変な騒ぎになったことと思われる。しかし日本人だったので、彼女らはまったくその存在を無視していたのである。
p48

この一場面だけで当時のイギリス人全体を判断するわけにはいかないが、英米が植民地を求めて世界中を侵略した事実を鑑みると、彼らに日本人のみならずアジア全体が振り回されたと判断できる。その中に西洋人の東洋人に対する差別は当然含まれている。太平洋戦争は日本にとって防衛戦争だったのだ。

最後に

以上3冊を紹介したが、他にもたくさん読むべき書籍はある。戦争に関連している書籍なら「英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄」、「失敗の本質」、「永続敗戦論」などもおすすめ。
なるべく多くの考えや意見に触れて見識を深めることで、世の中にはびこるとんでもない意見に接したときに、「それはおかしい」と判断できるようになる。

最近のエントリー

おすすめ記事

このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
TwitterとFacebookとRSSで更新情報を受け取れます
RSS

最近のエントリー