2017/09/22

毒のあるエネルギッシュな人に会ったときの対処法を学べる ー 【書評】チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷

23歳、領土も兵士もない状態から、たった4年で自分の王国を創るという寸前にまでいった人物がいた。彼の名はチェーザレ・ボルジア。1475年生まれのこの男は、父親が法王アレッサンドロ6世であることを最大限に利用し、ロマーニャからラツィオまでイタリア半島のほぼ3分の1を自分のものにした。しかし、チェーザレはあと一歩というところで、運命の女神に手のひらをかえされた。

マキャヴェッリは「たしかにこれまでに、ある人物がでて、神がイタリアの贖罪をお命じになられたかと思える、一条の光が射したことがあった。だが、残念ながら、彼は活動の最盛期に、運命の手から見放されてしまった。」(君主論 池田廉訳 中公文庫)とチェーザレを評した。日本ではほとんど知られていないが、この人物に塩野七生が光を当て素晴らしい著作となった。それが「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」。日本語で読める数少ないチェーザレ・ボルジアに関する書籍だ。

目的のために手段を選ばず

チェーザレ・ボルジアは自分の野心を遂げるためには何でも利用する男だった。あえて戦国大名で似ている人物を探すならば、織田信長が近いかもしれない。自分の目的の邪魔になる人物を次々と排除し、敵が多く、迅速果断に行動し、家臣に恵まれ、かなりいいところまでいったけど、最後に運に見放された。

毒がたっぷりのこの人物一人を塩野七生は渾身の筆で描ききっている。歴史書ではないし、小説でもないし、エッセイでもないし、でも同時に歴史書みたいな、小説みたいな、エッセイみたいにも感じる不思議な塩野七生の文体が、この「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」という処女作で十分に表れている。日本でマイナーな人物をここまで面白く読ませる意欲が溢れ、読み始めたら一気に最後まで読んでしまうだろう。読む時はイタリアの地図を頭に入れてから読むことをお勧めする。

実用的な読み方をするならば

チェーザレ・ボルジアのような人物は、ITベンチャーとか自営業の社長に多いかもしれない。他者との軋轢を一切気にしないで自分の道を突き進む。周りを巻き込んで、敵も味方も多い。たいてい評判は悪いがそんなことはまったく気にしない。もしあなたの周りにエネルギーがすごくあって、かつかつ歩く野心家っぽい人がいたら、その人はチェーザレのようなタイプかもしれない。

もしそういう人に出会ったらどう対応するか、本書を読んでおけば事前に考えておくことができるだろう。ちなみにレオナルド・ダヴィンチは自身の構想を実現するために、チェーザレと仕事をした時期があった。毒のあるエネルギー溢れる人物は、いろいろな人を惹きつけるのだ。

ま、こんな読み方をあえてせずとも、本書を読めば西暦1500年頃のイタリアにタイムスリップして時代を目撃したような気分を味わえます。また、日本史とちがって単独の国の歴史が成立しえないヨーロッパの歴史事情をよく理解できます。
※ちなみに今は文庫でも出てます

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このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
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