2017/09/27

【書評】チーズと文明  ドラクエのサイクロプスもチーズを食べてた

チーズ好きですか?

「チーズと文明」を読むと、チーズと共に歩んできた人類の歴史を追体験できます。「チーズだけでよくここまで語れるな」と感心しちゃいます。

チーズとか牛乳って子供の頃から口にして、誰しも何かしら思い出あると思う。子供の時からチーズケーキが好きだとか、牛乳飲んでお腹こわしたとか、牛乳飲んだら背が伸びるっていう神話を信じてたくさん飲んだけど伸びなかったとか。こんな身近なチーズとミルクの歴史はと〜っても古いと、「チーズと文明」教えてくれます。チーズの歴史がどれくらい古いかと言うと、農耕が始まったのと同じ頃だそうです。

それと、チーズを食べる習慣のほうがミルクを飲む歴史より古い。牛乳を飲むとお腹こわす人がいることから分かるように、乳糖(ラクトース)への耐性がない人はけっこういる。というのも、乳糖への耐性はもともと人類にはない能力だったから。農耕と同じく始まった牧畜により、家畜の乳が飲めるかもと人類は試してみたけど、お腹こわしちゃうからやっぱり飲めなかった。そして加熱して固めてチーズを食べるようになった。これならお腹こわさずに家畜の乳から栄養を摂取できるわけです。だから牛乳を飲む習慣よりチーズを食べる習慣のほうが歴史が古いんですね。

チーズプロフェッショナルの教本に掲載されていたあの神話

チーズプロフェッショナルの試験を受けた人なら知っているでしょう。羊飼いの少年がもった家畜の胃袋でできた水筒に入れていた山羊か羊?の乳が固まっていたのに気づき、人類がチーズを知ったという神話。これは成立しえないですよね。なぜならチーズを食べる前に、すでにミルクを飲む習慣があったことが前提だから。こんな面白いエピソードが「チーズと文明」には満載です。

チーズの旅すなわち人類の歴史

農耕が開始されると人口が急激に増え、小麦だけではエネルギーが足りなくなります。だからチーズから栄養を摂るようになる。農耕はだいた9000年くらい前に肥沃三日月地帯(今のアラビア半島北部周辺)から始まり、そこからエジプト、アナトリア半島(今のトルコ)、東はインドのほうに広まっていったわけだけど、チーズも農耕と同じく広まっていきました。

ワイン好きな人ならフランス、イタリア、スイスのチーズなど好んでたしなむでしょう。ブルー、シェーブル、ハード、ウォッシュ、白カビ、挙げればきりがないけど、あの多様性を思い浮かべると「チーズって本当に種類豊富で楽しいなぁ」といつも思うのですが、今日のチーズの多様性は、何千年も前からそれぞれの土地に合うように発展していった賜物なのです。

ホメロスのオデュッセウスにも出てくるチーズ

世界最古の文学とされるホメロスのオデュッセウス。この作品には一つ目の巨人キュプロクスが登場します。これがどんなものかは、最近ドラゴンクエスト11が発売されたドラクエシリーズでサイクロプスっていうモンスターが出てきますが、それを思い浮かべるといいです。ちなみにコイツね。

こんな一つ目巨人はオデュッセウスを追いかけ回します。でかいし強い。こんなのに追いかけられたらたまったものじゃないけど、この一つ目の巨人がチーズを好きだっていう面白い箇所がホメロスにはあり、なんだか可愛い気がしてきます。その部分をちょっと長いけど引用します。オデュッセウスがキュプロクスの住む洞穴へ入るくだり。ちなみに引用中のプリュペモスというのはキュプロクスの名前です。

(洞穴には)たくさんの小鳥類や、チーズがありました。ミルクの入った桶や甕もありました。檻の中には子羊だの、山羊だのがいて、万事がよく蓄えられてありました。ところへ洞穴の主人のポリュペモスが、薪の束をおびただしく持って帰り、それを入口に投げ出しました。キュプロクスは乳をしぼるために羊と山羊を中へ追い込めてしまうと、二十頭の牛でもひけぬ大きな岩を入口に転がしました。それから座って牝羊の乳をしぼりました。いくらかをチーズにするようにして、後の残りは自分の飲料としてしまっておきました。それがすんでその大きな眼で四辺を見廻しますと、初めて見知らぬ人たちが見つかったものですから、何者でどこから来たのだと尋ねながら、吼えかかって来ました。

ギリシャ・ローマ神話 ブルフィンチ 野上弥生子訳 岩波文庫 p306

この後ギリシャ人がキュプロクスに次々に殺されてしまうけど、最終的にオデュッセウスは知恵を駆使してこの難局を切り抜けます。興味ある人はぜひオデュッセウスを読んでみてください。本編は長いので、根気がない人は上記引用元の「ギリシャ・ローマ神話」を読むといいでしょう。いい感じでまとまってます。

以上書いてきたように、「チーズと文明」は有史以前の話題から始まり、古代の宗教や交易などの話題が豊富に繰り広げられ、やがて少しづつ現代に近づいてきます。チーズをめぐって人類がどう歴史を歩んできのたか、そんな追体験ができるとっても楽しい本です。

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このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
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