2017/11/04

トランプ大統領と安倍総理大臣の独裁傾向に対抗する本 ー 「暴政」ティモシー・スナイダー著

トランプ大統領が日本にきました。このトランプ大統領と安倍総理大臣は仲がいいもっぱらの噂。11/3の朝日の一面には”(トランプの時代 初のアジア歴訪)「わかった。シンゾーが言うなら」 日米首脳、際立つ蜜月”という見出しで以下のような記事が載っていました。一部を紹介します。

「シンゾー、北京でのレックス(ティラーソン国務長官)の発言をどう思うか」。10月4日、トランプ米大統領は電話で安倍晋三首相にこう尋ねたという。日米の政府関係者が明かす。

ティラーソン氏は9月末、北朝鮮と接触を図っており、対話に臨む用意があるか「探っている」と発言した。これにいら立つトランプ氏。10月1日、ツイッターで「小さなロケットマンと交渉しようとするのは時間の無駄だ」と突き放し、2人の路線に食い違いが露呈していた時だった。

安倍首相はティラーソン氏の発言の論評を避けつつ、「今は対話の時ではなく、圧力をかけていくことが大切だ」と返した。

米政府関係者はいう。「大統領は、側近にも言わないことを安倍首相に相談することもある」

トランプさんも安倍さんもちょっとばかり独裁傾向が強いという点で似た者同士なため、仲がいいのでしょうか。冷静に考えればアメリカと日本の政治体制からして独裁者などありえないですが、困ったことに二人が独裁の傾向が強いのは事実で、我々はそれに対抗しないといけない。どうやどうやって対抗するかについて学べるのがティモシー・スナイダー著作「暴政」。

ティモシー・スナイダーは「ブラッドランド」、「ブラックアース」の著者です。ブラッドランドはヒトラーとスターリンが蹂躙したウクライナとポートランドを指します。ナチスによるホロコースで死んだのはドイツのユダヤ人ではなく、大半が上の二つの国でした。「ブラッドランド」と「ブラックアース」はホロコーストと独裁を扱った本としては白眉です。

「暴政」はそんな本の著者が平易な言葉で書いた20の政治レッスンで、どんな時に独裁やファシズムが台頭するか、指導者はどうやって自分に権力を集中させるか、そしてそんな時に、われわれはどうやって抵抗するかなどのテーマを扱っています。市民に述べる内容もあれば、公務員に述べる内容もあり、示唆に富んでいます。

例えば「一党独裁には気をつけよ」という項目では、人は投票をする時それが最後の投票になるかもしれないのをを知らない、と説きます。1932年のドイツの投票では多くの人がナチ党に投票しました。その時投票した人は第二次大戦終結まで、それが自由選挙による投票の最後だと思っていませんでした。その後のナチスの独裁ぶりは歴史教科書に書いてある通り、多くの人の自由と命を奪いました。

なぜナチスはそこまで権力を集中することができたのか?それについては「忖度による服従はするな」で説明してあります。ここは引用しましょう。

市民が何らかの価値や原理を、自ら進んで抂(ま)げるなどということを、支配者たちは初めは理解していませんでした。

十分な数の人間たちが自発的に新たな指導者に精一杯の献身を示したからこそ、ナチスも共産主義者も同じように、「自分たちは速やかに完全な改革を進めるのだ」、そう気づいてしまったのです。熟慮を欠いた服従という初めの行為があったので、次の段階では逆戻りできないものとなってしまったのです。

p14

スナイダーは熟慮を欠いた投票や権力への忖度が一党独裁を生むのは、歴史の事例としてあったことだと説明します。まさにそれがナチスや1946年のチェコスロヴァキアだったのです。こんな昔の事例を挙げられても、今日のアメリカや日本で同じことが起きるはずがないと、あなたは思うかもしれません。はたして本当にそう言えるでしょうか。

ここ2年で安倍政権が通した共謀罪、集団的自衛権を思い出してください。民主党政権から自民党政権に切り替わった時、投票者は安倍政権がこんなに強引に共謀罪と集団的自衛権の法案を通すと少しでも想像したでしょうか。多くの人はそんなこと微塵も思い浮かべなかったでしょう。私もそうです。2つの法案への賛否はさておき、丁寧な審議を無視した安倍政権の強引な法案の通し方には多くの人が反発を覚えました。

太平洋の対岸にある国の大統領も同様な性質が見られます。トランプ大統領が中東諸国の人のアメリカ入国を禁止したのは記憶に新しいです。この時、多くの人がこの大統領令に反発と疑問を感じましたが、大統領は「中東の人はアメリカには悪だ」という一方的な思い込みで、命令を引っ込めませんでした。これ以外でも、この思い込みの強さは「温暖化はない」と言い張るトランプ説にも表れています。

この強引さが二人の共通点なのです、自分の支持者だけを重視して、その支持者へのアピールに都合の悪い言説はないものとして排除しようとするのです。あるいは、無いものをあると言い張ることもあります。この姿勢は大国の政治トップのあり方としては疑問を覚えます。こんな詐欺まがいの方法で、政権を強化した人がいました。ヒトラーです。

1933年2月27日午後9時前後に、ドイツ国会議事堂が燃え始めました。ベルリンでその晩火を放ったのは誰だったのか?私たちにはわかっていないし、そのことは本質的な問題ではないのです。問題なのは、このこれ見よがしなテロ行為が非常時の政治を発動させたことでした。

p102

なにもトランプ大統領や安倍総理大臣をヒトラーになぞらえようとは思いません。二人ともヒトラーが政権をとった時のように支持率は高くないし。二人はヒトラーのようにひどくありません。そう思いたい。でも、最初ヒトラーが圧倒的な支持で政権をとったときも、多くの人がヒトラーを狂気の人とは思っていませんでした。現在の日米二人の政治トップがそんなにひどい人でないとしても、国際状況によってはひょっとしたら豹変するかもしれない。そうなった時、強力な権力を持っているのはとても危険なのです。

「暴政」を読むと、暴走した権力、あるいはいつか暴走するかもしれない権力にどう抵抗するかについて考えるきっかけを与えてくれます。本文は全部124ページで1200円の気軽な本ですが、値段以上の価値がある本です。

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このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
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