2013/04/23

ドラッカーとオーケストラの組織論

本書は音楽関連の専門用語が多いため、オーケストラやクラシック音楽に興味がないと読むのは難しいだろう。音楽の基礎知識がない人が、ドラッカーの入門書として読むなら「もしドラ」のほうがいい。

一方、オーケストラやクラシック音楽好きには大変そそる内容。私は三度の飯よりクラシック音楽が好きなので、迷わず買った。ドラッカー入門書というよりオーケストラファンのための本と言える。

豊富なエピソード

有名指揮者やオーケストラの興味深いエピソードが満載で、クラシック音楽ファンならついつい読み進みてしまうだろう。速読したので、厳密には違うかもしれないが、構成は大まかに以下のようになっていると思う。

  • オーケストラはプロフェッショナル集団
  • 指揮者とオーケストラの関係
  • オーケストラ成立の歴史
  • ハイドンやベートーヴェンとオーケストラの関係
  • 時代と共に変化してきたオーケストラ
  • マーラーやR.シュトラウスの時代のオーケストラ
  • 大戦時代のオーケストラ
  • 戦後のオーケストラ
  • 未来のオーケストラ像

先ずはオーケストラというものの定義を、ドラッカーに絡めて最初にする。次にオーケストラと切っても切れない指揮者との関係が出てくる。それ以降は古典派の古い時代から順番にオーケストラの歴史や、各時代でどういう役割を担い、どういう風に使命を果たしてきたか、が描かれている。

各時代のエピソードが織り交ぜて紹介されているので飽きずに読める。特にジャン・フルネというフランスの巨匠がラヴェルのボレロのリハーサルをする下りは、指揮者の仕事がどんなものであるかを知る上でとても興味深い。

本書の通奏低音

本書の通奏低音、それは筆者のオーケストラへの愛だろう。

オーケストラの維持には多大な費用がかかる。それだけに組織として成果を上げないと存続できない。事実、行政からの支援打ち切りでなくなったオーケストラがある。非営利組織であるオーケストラだが、これからの時代は、支援に頼るだけでなく、独立した組織として魅力的な提案ができないと存続すら厳しいのだ。

こういう現実の一方、最後には希望に満ちたエピソードが紹介される。

南米ベネズエラから17歳の青年がベルリン・フィルに入団した。オーケストラ文化のほとんどなかった地域から凄腕の若者が誕生した背景には、「エル・システマ」と呼ばれる社会、音楽、オーケストラが一体となった教育システムがあったことを紹介している。

音楽の喜びが、子どもたちを犯罪から守り、文化の底上げをして、ひいては長く続く国際紛争を解決する糸口になるような民事交流を生む、というものだ。

財政面でいつの時代も苦境にあるオーケストラだが、お金がかかっても音楽の喜びを伝えてくれるオーケストラを維持する価値はあるのだ、と筆者が筆者自身を励ますかのように締めくくられている。

オーケストラの背景を知った上で演奏会に行くと、今までとは全く違う楽しみ方ができるに違いない。オーケストラファンなら必読の書。

このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
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