【雨月物語】江戸時代の最恐ストーカーに背筋が凍る!

まじストーカーの最恐物語で暑さが吹きとぶ

夏の盛りのこの時期、冷房を効かせた部屋で、きりっと冷えたビールを飲みながら読書するなんてのはけっこう贅沢な時間の過ごし方。そして、どうせなら少しでも体温の下がる本を読みたい。おすすめは日本の古典「雨月物語」だ。

雨月物語 上田秋成

怖くて面白く、かつ古典を読んで教養もつくというお得な本

今回選んだのは9編から成る雨月物語。以下が目次と、簡潔かつ主観的にまとめたそれぞれの内容。なお一部の話は本当に怖い。お化けの怖さではいのだが、とにかくぞっとする。

  1. 白峰歌聖と魔王の対決
  2. 菊花の契死して果たされる男の約束
  3. 浅茅が宿久々の我が家で一夜明かし、朝起きると荒野だった
  4. 夢応の鯉魚坊主が魚に変身して釣られてしまう幻想作品
  5. 仏法僧この世のものでない一団の宴席にうっかり加わってしまった
  6. 吉備津の釜ナンパした女が捨てた奥さんの怨霊だった
  7. 蛇性の婬最怖ストーカーに追い回される
  8. 青頭巾仏の化身のような坊さんに、悪僧なすすべなし
  9. 貧福論金好きの武士と、枕元に現われた黄金の精とのマネー論

江戸時代のインテリ上田秋成による怪談集。短編から構成されていてそれぞれ完結しているので、一冊を通読する必要がない。そのためまとまった時間がなくても楽しめるので、親しみやすい。
古文が苦手な方にも現代語訳が一緒になった版があるので抵抗なく読める。この記事では以下の4つを簡単に紹介する。

  • 白峰
  • 夢応の鯉魚
  • 吉備津の釜
  • 蛇性の婬

白峰

まるで水滸伝

第一編の「白峰」は魔王になりはてた崇徳院と西行が対決する物語。都が飢饉になったりするのは崇徳院の怨霊。平氏が滅んだのは崇徳院の怨霊。
怒りと怨念でいっぱいの崇徳院の怨霊。しかし西行がこれを諌める。古の中国を治めた天子のように徳高くあるように、と崇徳院を諌める。
この対決場面は水滸伝の恐ろしい場面を喚起させる。挿絵もよくできていて傑作。

西行が崇徳院に対して諌めるその内容に、古の中国の国名がよく出てくる。今と違ってネットで調べて古い中国の国名を調べるなんてことは不可能な江戸時代。おそらく上田秋成は司馬遷の史記を読んでいたと推測できる。
他にも日本や中国の古典に由来する色々なモチーフが登場するのは、上田秋成がインテリだった証拠だろう。

上田秋成がやったのは物語の再構成。古典や昔から伝わる物語を、江戸時代の感覚に合うように編み直した。そのセンスが抜群なのは雨月物語を読めば分かるし、江戸時代どころか、現代にも通じる古典として今も評価が高い。
雨月物語に出てくるちょい役の登場人物、例えば西行とか尼子経久、蒲生氏郷、関白秀次とか、こういう役に選ばれた人物は、当時(江戸時代)の人に人気のあった人物だと推測ができる。
なぜならインテリの上田秋成が自分の知性を発揮した物語に、恣意的に登場人物を選ぶわけがないからである。
しかし、こういった努力に関わらず雨月物語はあまり流行らなかった(らしい)。雨月物語が名声を得たのは上田秋成がなくなってずっと後のことのようだ。

夢応の鯉魚

魚好きは必読、ほっとひといきつくファンタジー

漁師から魚を買っては逃がしてやる慈悲深い坊主の幻想あふれる不思議なお話。

このお坊さん、絵の達人であり生きている魚よりリアルな魚を描く。

ある日、突然意識を失い人事不省に陥る。そして彼は不思議な夢を見る。夢のなかで出会った魚の精から、魚になって泳ぎ回れる能力を授かる。翼を持ったイカロスのように、坊主は得意になって泳ぎまわるのだが、どうしようもない空腹に襲われる。そして釣り糸に食いつき、いつも魚を買ってる知り合いの漁師に捕まってしまう。

いろいろな読み取り方が可能

魚になっても腹が空く。魚に変身するなんて、魚好きな坊主には夢のような出来事なのだが、夢をかなえたら叶えたで、魚には魚の苦労があるのだ。

ヘルマン・ヘッセは「あの山の向こうに幸い住むと人はいう」と新しいものを追い続ける愚かさを詩にした。現代の若者が、「面白くないから転職したい」と、新卒が2ヶ月で会社を辞めて別の会社に移ったとしても、いいことなんて簡単にはない。そんなことが読み取れる。

こういう古典に、現代にも通じる内容がちゃんと書かれている。

吉備津の釜

ぶっちぎりで一番怖いので、とりあえずこれだけでも読むべし

9編から成る雨月物語だが、もっとも恐ろしいのは「吉備津の釜」。「吉備津」というときび団子の吉備のことで今の岡山県である。この地方のよくできたある女と遊び人の男が結婚するのだが、吉備津の釜(占いの道具のようなもの)はこの結婚がうまくいかないと占う。

そんな占いはお構いなしで進められた結婚は、男が浮気して女を捨てる展開。そしてある日、ひょんなことから知り合った女を男がナンパしようとしたら、その女は捨てた女房の怨霊だった。その結末は怖すぎてここには書けない。

蛇性の婬

江戸時代の超悪質ストーカーのおはなし

ウルトラヘビーなストーカーの話。しかも神通力を持った蛇が相手だから始末が悪い。

この悪の蛇は、気に入った人間の男主人公を手に入れるために濡れ衣を着せ、しつこくつきまとい、関係者を殺し、とやりたい放題。それも全ては己の貪欲さのため。現代でもストーカー殺人がニュースになるが、江戸の昔にも同じ感覚はあったのだ。

とにかく、ハニートラップ、色仕掛けには用心するしかないが、こんな強敵に目をつけられたら、なす術がない気がする。だっていくら逃げても追いかけてくるのだから。

終わりに

上述の通り、雨月物語はいろいろな物語を再編集したもの。中国の古典に由来するお話がたくさん登場する。もちろんこれらに関する知識なくても十分楽しめるが、深い知識があればより深く味わうことができる。我々は工夫をこらした江戸のインテリを、そこに感じることができる。

こういった仕掛けを例えばビジネスに導入できれば、顧客満足度もじわじわ上がる。古典は現代のビジネスにも通じるものがあるのだ。
こんな怖くて、かつ役に立つ一冊、読む暑気払いとして楽しめば、きっといい夏になるに違いない。

このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
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