2014/09/27

読書の技法 佐藤優

どうせ本を買うなら収入アップにつながるような本を読んでその内容をしっかり身につけたほうがいい。

この「読書の技法」(著者:佐藤 優)は上記のように貪欲に本を読もうとする人にぴったりの内容。普遍的な実力を身につけるにはどうやって本を選び、どうやって本を読めばいいか、極めて具体的にその方法が書いてある。
この本を読んでしっかり実行すれば確実に教養が身についたり、自分でものごとをしっかり考えられるようになるだろう。(※勘違いしないでほしいが、この本を一冊読めば教養が身につくわけではない)。

この本には速読や熟読の技法も書かれているが、根底にあるのは「時間を節約して効率的に読書する」という考えだ。若いうちは意識することがないが、人間一人の人生の持ち時間は有限である。だから効率的に本を読まないと本当の実力は身につかない。そんな著者の考えは「はじめに」で書かれている。

なぜ、読書術が知の技法のいちばん初めに位置づけられなくてはならないのだろうか。それは、人間が死を運命づけられている存在だからだ。そのために、時間が人間にとって最大の制約条件になる。

効率的に読書で勉強することが大事だが、目的意識も同様に大事である。

現実の出来事を説明できないなら、本物の知識は身についていない。重要なことは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになることだ。

目次

  1. 何を勉強すればいいか
  2. どうやって本を選んで買うか
  3. どうやって読むか 熟読と速読
  4. 小説は役にたつか?

何を勉強すればいいか

社会に出て、あるいは仕事を始めて、思うようにいかなかったり、壁にぶつかることは誰もである。そういう時に自分に何が欠けているかを冷静に自問する。考えた結果いろいろな答えが出てくるだろうが、筆者は社会人としての基礎学力が欠けているのではないか、と言う。
そして高校の教科書を勉強し直すといいと具体的にアドバイスをしてくれる。高校レベルの基礎学力がないと、仕事に必要な難しい書籍は読めない。だから正しい基礎知識と読書法を身につけよう。と言うのである。引用する。

他人の経験、知的努力を、読書によって自分のものにするのだ。正しい読書法を身につければ、人生を2倍、3倍豊かにすることができる。読書によって、数十人分の経験を身につけることができる。

知識を着実に身につけ、人生を豊かにするためには、正しい道に沿って読書をすることが重要だ。(中略)まず正しい道、すなわちすでに確率されている伝統に則して本を読むことが重要だ。その意味で、読書術は基本的に保守的なのである。本書で、筆者が高校教科書レベルの基礎知識をつけておくことを強調しているのも、それが知の技法を押さえるために最も確実で効率的だかからだ。

受験勉強が現実の社会生活の役に立たないという認識は間違っている。社会人が大学受験のレベルで必要とされる知識を消化できていないため、記憶に定着していないことば問題なのであって、受験勉強の内容は、いずれも社会人になってからも役に立つのだ。

目的意識をもって高校レベルの復習をすれば、その知識は確実に活かすことができる知に転化する、と著者は言う。さて、問題は何を読めばいいかだが、それは高校の教科書である。
どの教科も成績優秀でオール5だった人はそんなにいないだろう。自分の不得意だった分野を集中的に勉強すればいいのだ。そうすれば、例えば難しくて読めなかった経済の専門書が読めるようになる。経済書が読めないのは、微積分も理解してないのに読もうとするからだ。
だから高校の数学の復習をしよう。このように著者は言う。

ビジネスパーソンが基礎知識を強化しようとする場合、高校の教科書と学習参考書を手引にして、それに少し工夫を加えれば、短期間、具体的には半年から1年で、かなり高いレベルの知識と教養を身につけることができる。

勉強すべきジャンルは以下が挙げられている。そして「読書の技法」の中には各教科ごとに詳しく勉強方法が書かれている。特に国語は多くの人にとって必読と思われる。国語での推薦学習書は「NEW出口現代文講義の実況中継」。
この本に紹介されている論理の力は身につけていない人なら一番最初に勉強するべきだと思う。一番即効性があり、特別に難しいことはなく、仕事に活かせる。

  • 世界史
  • 日本史
  • 政治
  • 経済
  • 国語
  • 数学

どうやって本を選んで買うか

高校の教科書を勉強したら、より難しい内容を読んでいくことになると思う。その際、しっかり読むべきものとそうでないものを仕分けることが重要となる。そのために手っ取り早くのは、いい本屋に行って、書店員に聞くといいというのだ。

熟読する本を選ぶ際、いちばん簡単で確実な方法は、その分野に詳しい人に聞くことである。(中略)八重洲ブックセンター本店、丸善丸の内本店、三省堂書店神保町本店、ジュンク堂書店池袋本店、紀伊國屋書店新宿本店などの書店において、専門書売り場の書店員の取扱商品に関する知識は、月並みな大学教授を凌駕することが多い。

未知の分野で自己流で本を選んだり読んだりするとつまずく可能性が高い。そういう可能性をつぶすために、詳しい人に聞くといい。自己流でピアノやテニスを初めてもあまり上手にならないから、教師につくのと同じである。

どうやって読むか 熟読と速読

熟読

毎月最低300冊は読書する著者でも、熟読する本は多くて7冊という。熟読は時間がかかるので、選り抜きの本を読まないと時間の損失となる。選り抜きの本は詳しい人に選んでもうらといいのは既述の通り。
さて、ある分野のことを新たに勉強するにあたって、まずは基本書とでもいうべき本を読む際は自ずと熟読となる。その際の具体的な方法が詳しい紹介されている。

その方法とは、同じ本を3回読むこと。一度目は漫然と読まず、重要だと思う箇所や、意味のよく分からないところは鉛筆かシャーペンで線をひく。当然図書館の本ではなく購入すしかない。
余談だが、人は購入することで元をとうろと必死に読むので、借りるよりよく身につくとのこと。私もこれには賛成だ。

二度目は線を引いた部分でさらに重要な箇所に囲みを作り、それをノートに書く。こうすることで記憶に定着する。ノートそれ自体は目的でなく、あくまで記憶に定着させるためにノートに書くこと。パソコンのEvernoteなどを利用してもいいが、私の考えでは紙に書くほうが記憶の定着率は圧倒的にいい。
なぜなら、PCでタイピングすると扱う情報が速すぎてついていけないのである。PCは単純に書記をするなどならそれでいいが、理解を深め記憶に定着させるためなら紙に書くほうが、人間本来のリズムに近く効果的だと思う。

三度目の通読は、目次を頭に叩き込んで読む。一度目のときよりはるかに早いことに気づくだろう。これは理解が深まった証拠だ。簡単だが以上が著者の言う熟読の技法。まずは一度やってみることをおすすめする。

本の内容を理解すれば同じ本を買わずに済む

私はかつて同じ本を買ったことが何回か買ってしまったことがある。しかも過去に読んだことに気づかず、半分くらい読むまで気づかなかった。
我ながらこれはひどい。過去に読んだ時間ともう一度買った金が完全に無駄である。この類の失敗を繰り返さないためにも熟読は役に立つだろう。

速読

速読はすでに知っている内容を読まないで、新しい情報だけを追加するイメージ。既知の部分は飛ばして速読すれば、時間の節約となる。なお、巷での見開きの1ページを写真のようにみて読み進める速読とは根本的に技法が違うので注意が必要。

速読の目的は読まなくてもいい本をはじきだすこと。一生で読める本の数は限られている。

速読は新聞や雑誌の読み方に似ていると思う。新聞とか雑誌を1ページ、1文字漏らさず読む人はあまりいないと思う。大抵は必要な部分だけを選んで読んでいる。読書の場合も同じだ。なお著者の大事な指摘があるので、よく覚えておくといいだろう。

読むのにそれほど時間がかからないということと本の水準との間に直接的関連はない

小説は役にたつか?

小説はビジネスに役にたつだろうか。これは私も疑問に思うことがあるが、役立てようというつもりで小説を読めば、そういうふうになるだろう。
漫然と楽しみのためだけに読んでは得られるものはないが、そういった趣味のためだけの読書は、もちろんそれが好きな人はそれでいいが、読書の技法の趣旨からは外れる。著者は小説を代理体験として読むべしと言う。以下引用。

小説も「社会の縮図」「人間と人間関係の縮図」として類比的に読むことで、社会や人間理解の幅と奥行きを広げることができる。それに加えて、小説には「代理経験」の側面もある。人間が個人的に経験できることは限られている。そのため、優れた小説で代理経験を積んでいくことは人生を確実に豊かにする。(中略)ときどき他人の気持ちになって考えることが苦手な人がいる。本当のエリートには、単に学力が秀でているだけでなく、社会や国家を指導していく見識と人格が求められる。そのための基本が「他人の気持ちになって考えることができる」ということだ。

ベストセラーもただのミーハーで読むのではなく、共通の話題を作る目的で読めばいいと著者は言う。他にも、世界的なベストセラーなら各国語に翻訳されるから、語学の習得に役にたつ。小説もいろいろな読み方があるのだ。

読者から「ベストセラー小説、たとえば村上春樹さんの「1Q84」を読んだほうがいいでしょうか」という質問を受ける。筆者は、「ぜひ読んでください」と答えている。なぜならば、ベストセラーはどんな作品であっても、その時代の雰囲気をつかんでいる。「1Q84」は文句なしに面白く〜300万部以上刊行されている。だから、このテキストは活字を読む人々の共通の土俵を作っている。この土俵に乗ることで、さまざまな人との新しい知的出会いの機会が増え、この本を読む前と後では、世の中が違って見えてくる。

このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
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