2014/10/27

いじめについて考える本 最終回「生かされて」

いじめについて考える本の紹介は今回が最終回。紹介するのは1994年のルワンダ大虐殺を生き延びた女性の手記「生かされて」。

生かされて

ルワンダの大虐殺については、知っている人も多いだろう。1994年にルワンダでフツ族がツチ族の虐殺を開始し、3ヶ月で約100万人が殺された出来事。この虐殺を幸運にも生き延びた女性イマキュレー・イリバギザの手記が「生かされて」である。強い信仰心によって生き延びた様がよく描かれている。今回いじめについて考える本で紹介する本の中で最も凄惨な世界が描かれている。

フツ族とツチ族は大した違いもない(無いと言っていいくらい)2つの民族なのだが、ルワンダでは7割がフツ族で2割がツチ族、残り1割未満がそれ以外の民族とされていた。当時、政権を握っていたフツ族は、国境にいたツチ族の武装集団の攻撃を受けており、それと呼応し国内のツチ族が団結し攻撃してくるのを恐れていた。やられる前にやろうと決めた政府はツチ族の虐殺を開始する。フツ族に武器を配り、煽り、近所のツチ族を虐殺するように煽動した。その結果イマキュレーが子供の時に家に遊びにきていた人が、学校の先生が、近所の友人が、殺人鬼と化したのだ。フツ族の政府は「ルワンダを黙示録に描かれた世界にしてやる」と公言する。イマキュレーが見たのはそれが現実になったルワンダだった。

(※黙示録とは「ヨハネの黙示録」。仔羊が7つの封印を開いて次々に厄災が人類にふりかかる物語。封印が開く度に不吉なことが起こる。赤い馬が戦争をもたらし、黒い馬が飢饉をもたらし、青白い馬が冥府をひきつれてくる。最後に7つ目の封印が解かれると、7人の天使が地上に火を投げ、地震と雷が起こる。という感じでとにかく怖い。詳しくは聖書を読むべし)。

狭いトレイに3ヶ月間

愛する親、兄弟とは散り散りになり教会にかくまわれたイマキュレーと数人の女性たち。そこの神父はイマキュレーたちを使用されなくなったトイレに隠し、信用できないため教会内の他の誰にもそれを教えなかった。毎日のように殺人鬼たちが徒党を組んで襲来し、そのたびにトイレで息を殺して恐怖に怯える。そんな日々が3ヶ月も続いたのだ。

恐怖に怯え続ける3ヶ月の後、隠れていた教会の近くに国連軍が到着。自体打開のためにそのキャンプに移動する決心をして、イマキュレーは命からがら辿り着いたのだった。そして色々な情報が入ってくる。行方不明の家族の情報が。。

「生かされて」の前半はイマキュレーの家族に対する愛情や思い出が綴られている。イマキュレーの一家は稀にみる強い絆の家族だった。特に兄のダマシーンとは特別に仲が良かった。イマキュレーはその最愛の兄の死を、知り合いから聞かされることになる。その場面を紹介する。

私の家で昔働いていた女性の一人が見ていて、後ですべて話してくれました。 「お前の綺麗な妹はどこなんだ?」と殺人者は、私の兄に聞きました。「イマキューレはどこにる?お前の家族のゴキブリどもの死体は見たけど、あの女のはまだ見ていない。あいつはどこだ?話せば助けてやろうじゃないか。もし話さないなら、一晩じゅうなぶり殺しにしてやる。イマキューレがどこにいるか話せ、そうすれば放してやる」 ダマシーンは、傷だらけの、腫れ上がった顔で彼らを見ました。そして、これまでもずっとそうしてくれたように、私のために立ち上がったのです。「僕の美しい妹がどこにいるか知っていたとしても、話すものか。イマキューレは決して見つからない。彼女は、お前たちが皆でかかっても叶わないほど頭が良いんだから」彼らは、大鉈で彼をさんざん打ちのめし、あざ笑いました。「あの女はお前みたい賢いっていうのか?お前は修士号を持っているのに、俺たちにむざむざ捕まったじゃないか。さあ、お前の妹がどこいるか話すんだ」ダマシーンはもう一度よろけりながら立ち上がり、殺人者たちに向かって微笑んだのです。彼が恐れていないことが彼らを混乱させました。彼らは、大勢のツチたちが最後にあげる命乞いの声を楽しんでいたのです。ダマシーンの態度は、彼らの喜びを奪うものでした。取引しようとも、慈悲を願おうともせず、彼らに殺されることに立ち向かっているのです。

「彼が恐れていないことが彼らを混乱させました。」とある。これこそ「いじめ」に対して対抗する強力な手段だ。「生かされて」の中でもとりわけ強いメッセージの込められた一節。

旧約聖書

いじめについて考えるの最後に紹介するのは旧約聖書。

旧約聖書の「出エジプト」という有名な物語がある。ユダヤ人がエジプトを脱出し、モーゼの祈りで海が割れてエジプトの追撃から逃げおおせる。このユダヤ人たちは、簡単に言うといじめられっこである。当時のエジプトと言えば最大最高の文明。その中でユダヤ人といのは迫害され続けたマイノリティの集団、つまり奴隷だった。出エジプトというのは平たくいえば、どこにでもある奴隷脱走事件だったわけだ。その後イスラエルに国を作ったが戦争に負けて、バビロンの捕囚に遭い、世界各地に散って、ナチに迫害され、アンネの日記が書かれやっとイスラエルに再度国を作ったが、今度は周囲の国からいじめられ、と散々ないじめられっ子のユダヤ人である。

そんなユダヤ人の戒律である旧約聖書は、いじめを考えるのにいい本だと思う。旧約聖書自体を読んでも比喩が多くいまいち分かりにくいだろうから、旧約聖書の解説本などを読むといいかもしれない。

いじめについてのまとめ

三度にわたって紹介してきたいじめを考える本。これらを読むと人が人をいじめる構造が浮かび上がってくる。まとめると以下のような感じだろうか。歴史的な虐殺も、小中学、高校のいじめも、規模こそ違うが根本的な部分は同じだと分かる。このいじめの構造を理解すれば、いじめに対する耐性が身につくだろう。

  • マイノリティ(少数派)はいじめられる 例:ユダヤ人、被差別部落、ルワンダのフツ族
  • 権力側は自分の権力を維持しようと弱いものをいじめる 例:ユダヤ人、インドのカースト、ルワンダのフツ族
  • 嫉妬ややっかみで他人をいじめる 例:被差別部落、
  • よく分からないけど周りがいじめているから自分もいじめる 例:被差別部落、ルワンダのフツ族

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このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
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