2014/12/03

地方消滅 増田 寛也著

「地方消滅」という本が話題になっているのをよく見かける。著者の増田 寛也さんは総務大臣を務めたことがあるようで、詳細なデータに基づいた分析は少子化、地方の空洞化が今そこにある危機であることを警鐘する。この分析が正しいとして、なにも対策を打たないと200年後には地方だけでなく日本から日本人が消えてしまうかもしれない。

目次

  • ブラックホール東京
  • 地方消滅を防ぐ対策案
  • アベノミクスばかりが争点になっているが

ブラックホール東京

おおまかに今の日本の人口動態を説明する。増田さんの分析によると東京が人口を吸い上げて消滅させるブラックホールになっているというのだ。地方の若者は地方にない魅力を求めて東京にどんどん集まってくる。しかしご存知の通り東京の物価は高い。
日本一どころか世界でもトップレベル。いくら人口が多くても結婚する人、子供を生む人が少ないため、地方から吸い上げた人口を東京が消し去ってしまう。
地方からの人口吸収は絶えず行われるが、地方の人口は当然限りがあるので、やがて吸い上げる人口が消えて東京も人口が減り始める。このようにして日本全体から人が減っていく。

実際に現在、日本は2010年頃を境に人口減社会に転じた。この問題の恐ろしいところは、一度この傾向になってしまうと歯止めがかからないという点にある。
仮に有効な対策打てたとしても、効果が上がるのは20〜30年後なのだ。だからこそ今すぐに対策を打たないと日本人のいない日本列島となってしまう。
人口が減った場合、隣国が大挙して日本に攻め寄せてくることは十分に考えられる。1000兆円もある国の借金も人口が減っていけば税収が減って返済できなくなる。

これが日本の現状である、との分析。

地方消滅を防ぐ対策案

東京の人口ブラックホール化を防ぐのに効果的な対策は地方の活性化である。最近新聞で「地方創世」という見出しをよく見るが、まさにこれである。政府も地方の活性化は課題としては気づいているのだ。ただ具体的にはどうすればいいのか分からない。

増田さんの処方箋は地方都市を活性化させるというもの。限りある人、予算などの資源を地方都市に集中させる。そこを橋頭堡にして各地方都市の先にある田舎も活性化していくという案。
大学なども活用して、若者が地方に留まるようにするか、一時的に東京にきても仕事は地方に戻るようにする。それには地方都市の活気が必要となる。
地方都市に活気があればわざわざ生活費の高い東京に来る必要はなくなり、東京のブラックホール化という構造をなくすことができる。

北海道は日本の縮図

2007年に夕張市が破綻した。高い税金に最低のサービス。学校は1校のみ、公務員は半減し、役所も一箇所のみ、といった状態らしい。日本がデフォルトすれば同じような状態になる。
夕張は破綻の例としてここに挙げたが、増田レポートによると北海道全体が、日本の縮図のようなものとして捉えることができるらしい。1996年には最大だった人口は10数年たった今、すでに右肩下がり。景気のいいときはイケイケだが、いったん下降に歯車が回り始めると止まらなくなる。
札幌が道内の人口を吸い上げ、釧路、旭川、小樽など札幌以外の都市は軒並み人口が減っている。

人口が微増に転じた鯖江とニセコ町

メガネのフレームで有名な福井県鯖江市と、スキーのパウダースノーで有名な北海道のニセコ町。この2つの町は人口が微増した稀有な例だそうだ。どちらも他では真似できない特色があるため、その魅力でもって人口が微増しているようだ。
ここで大事なのは、一つの企業に頼らないということだろう。ソニー、シャープなどの日本を代表する大企業の凋落はよく知られている通り。
世界の亀山工場は5年で閉鎖した例がある。グローバル資本主義という激しい競争に企業がさらされている今、一つの大企業が工場を作るから人口が増えると考えるのは早計。

アベノミクスばかりが争点になっているが

1票の格差が是正されていないままの今回の衆院選挙、アベノミクスばかりが争点になっている。成長戦略を矢の一つにしているが、働く人口が減っていくのに経済を成長させるのは至難の業。
こういう根本的に大事な部分に蓋をして、株価とか円安だけを判断して景気はよくなると煽っても、結局そんなことは表面的なことに過ぎず何の解決にもならないのではないか。

人類の有史以来、疫病や災害を除けば人口は常に少しづつであっても増えてきた。それが疫病や災害を考慮しないで人口が減っていくというのは人類が史上初めて経験することだ。この難局にこそ、よく考えて1票を投じたい。

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このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
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