2018/01/14

【書評】レット・プラトーン 14時間の死闘 著者:クリントン・ロメシャ

レッド・プラトーン

2009年10月3日午前6時、アフガニスタンのヌーリスタンにあるアメリカ軍基地をタリバンの重武装した300人の兵士が奇襲した。基地は山に囲まれ攻撃に弱い脆弱な地に築かれていた。攻撃は14時間に及び、多数のアメリカ軍兵士が死傷した。本書はその攻撃を生き延びたクリントン・ロメシャによるノン・フィクション。過酷な戦場を体験した当事者にしかできない衝撃的な描写の数々に言葉を失う。

副題に14時間の死闘とあるが、419ページの大半が攻撃を受け始めた最初の2時間に使われている。著者は戦場で攻撃を受けている真最中はたった数秒を果てしなく長い時間に感じるというが、奇襲開始からしばらくはタリバンの猛攻が続き、アメリカ軍の状況は最悪だった。ページの割き方はそんな著者の体験した地獄の感覚を反映しているのだろう。

地獄のような戦場の描写は生々しく陰惨だ。例えばタリバンの攻撃で負傷したアフガニスタン国軍兵士は両眼を失った。以下はその描写の引用だ。

ひとりかふたりは、ぞっとするような傷を負っていた。もっともひどい負傷者は、両眼を失っていた。手榴弾かRPGに顔を直撃されたようだった。右の眼球が、白っぽい神経につながったままで、眼窩からぶらさがっていた。左の眼球は穴があいて、中身 ー 透明のゼリー状の液体 ー が顔の左側を流れ落ちていた。

こんな負傷者が出るほどアメリカ軍に不利な状況が続くが、やがて航空支援が開始され、戦況は一変する。基地の周囲の山腹にいるタリバンをアメリカの軍用ヘリコプター「アパッチ」や戦闘機が攻撃し始める。これに関しても言語に絶する描写が出てくる。アパッチに搭載されたチェイン・ガンの無慈悲な攻撃力は、それを人が作ったのかと思いたくなる。

アパッチの30ミリM230チェイン・ガンには、把手がふたつある。ひとつはレーザー照射を作動する引き金で、もうひとつは機首下げに取り付けられ、油圧で作動するチェイン・ガンに接続されている。チェイン・ガンは、1分間に625発を発射できる恐ろしい兵器で、機関砲弾は前腕の半分ほどの長さで、親指の倍ぐらい太い。弾着と同時に爆発し、必殺範囲は3メートル以上に及ぶ。10発を一連射すれば、木を倒すほどの威力がある。人間はとうてい生き延びられない。肉片と化す。四肢や首がちぎれ、どの部分かも判別できないかけらが、かなり遠くまで吹っ飛ばされる。

アパッチの機上の銃手ふたりには、至るところで拳大の土煙がぱっと噴きあがるのが見えただけで、どういう結果が出ているのかは見分けられなかった。しかし、座席の真下に搭載されているチェイン・ガンの威力は音と感触でわかった。座席が激しく揺れていた。

こういった悲惨な描写以外にも強く印象に残ったことがある。著者を初めアメリカ軍兵士は不利な地形に築かれた基地に文句も言わず兵士として忠実に任務を遂行する。銃弾や砲弾が目の前や足元を飛び交う中でも、兵士同士が互いに協力し仲間を援護したりタリバンを食い止めようとする。この使命感がどこから来るのかよく分からないだけに、かえって戦争の不毛さを印象づけている。

著者がアメリカ軍兵士なのだから当然なのだが、本書にはタリバンに殺されたアメリカ軍の兵士の写真がたくさん出てくる一方、アメリカ軍のアパッチなどによって肉片と化した数百人のタリバンの兵士の顔も名前もまったく出てこない。タリバンの立場からこの戦いが記述されたら、どういう本になり、それを読んだらどういう感想を抱くのだろう。

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このブログの筆者

早川朋孝
早川朋孝
ネコ好きな読書家。
月一冊は専門書を読むのが目標。年間読書計画はだいたい決まっているが、だいたい横にそれるのが悩み。好きな作家は塩野七生さん、佐藤優さんなど。タバコ嫌いで、ちょい右寄りです。

仕事はウェブが専門。学生の頃よりウェブ制作に従事し、CMSの提案やアクセス解析が得意。上場企業や、東京オリンピック関連サイトなど大規模ウェブサイトのプロジェクトを多数経験。仕事のウェブサイトはこちら
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