ウェブは用いる人のリテラシーで決まる 反トンデモ、反ネトウヨ、反・反知性主義を宣言し、
自分の言説は実証性とエビデンスを重視します
Twitter Facebook
TOP >> ウェブは用いる人のリテラシーで決まる>>

飲食店のノーショウがなくならない。理不尽だ。ムカツクと思っている人たちへ

2018年05月22日 エッセイ食べ物の話

飲食店のノーショウが増えているようで、一部報道によると被害額は年間2000億円なんて試算もあるくらい。最近少しだけだがお店側の対策が見られるようになったようだ。ちょっと前だがNHKのニュースによるとクレジットカード「ダイナースクラブ」が、予約客に「ドタキャン」された飲食店に別の客を呼ぶサービスを開始するとのこと。詳しくは知らないが、ノーショウの客の電話番号を共有するなんてサービスもあるらしい。

Facebookなどを見てると飲食店の人のノーショウに対する憤りはすごく大きいし、怒るのは当然だと思う。お店をやっている知り合いが多く食べ物に感心がある私にとって、ノーショウはとても関心のある問題である。

「ノーショウなんて理不尽だ。そんなマナー違反するやつ客じゃねえ」と思っている飲食店の経営者や店長は多いでしょう。しかし、客側からしてもお店に対して腹がたつことはあるのです。私は飲食の仕事の経験があるわけではないですが、飲食店の大変さは少しは知っているつもりです。また、客として飲食店を利用することもあります。そのためノーショウについてそれぞれの視点を書いてみたいと思います。

客は飲食店の視点を想像してみよう

「ノーショウやドタキャンがお店にとってどれだけの損害かお客さんに知ってほしい」というのが飲食店の本音でしょう。とくに大人数の予約キャンセルは死活問題です。その予約があると他の客は断らないといけないし、食材などもたくさん用意する必要がある。予約がある時点でコストがかかっている。それが何の連絡もなしに当日に予約客が現れないなんてことになったら、食材がもったいないじゃ済まない。大損害である。

料理人は美味しく食べてもらおうと時間をかけて下準備をするし、食材を買った業者に支払いをしないといけない。予約するだけでコストがかかっているんです。それなのにノーショウが続いたら、客に対する警戒心から味もサービスも落ちる可能性が出てきてしまうのは避けられない。

「時間になっても一人もこないし、連絡はないし、次からは一見の大人数は予約とらねぇ」とか、「大人数の場合はノーショウされても損害を最小限にするために食材コストを抑えよう」とか思って当然でしょう。その結果、ちゃんと約束を果たす他のお客さんにしわよせがいってしまう。顧客満足度が下がりお店は閑散として、、、、、と、このようにノーショウはお店にとってとんでもない迷惑行為なのですが、にもかかわらず、ノーショウへの法的な罰則がないという著しく不利な状況で、お店の人は営業しているのです。

たいていの客はノーショウなんてまずしませんが、ごく一部の非常識な人のせいでこんだけの迷惑・被害をお店は被っています。お店をやっている人のリアルな嘆きを読みたければ、この記事とか読んでみてください。

お店の人は客の視点を想像してみよう

ここでいう客とは、多くはビジネスマン、サラリーマンです。ずっと飲食業界で働いている人なら、一般企業の正社員がどれだけ大変かはあまり知らないでしょう。飲食店も激務でしょうが、それとはちょっと種類が違います。成果主義で不安定な収入、勤続年数によるベースアップはなし、残業、土日出勤は当たり前、こんな中小企業はいくらでもあります。大企業なら大企業で大変です。定時退社は厳命されているけど、仕事が減るわけじゃない。仕事の持ち帰りはセキュリティーポリシーでできない。明かりのない暗いオフィスで業務をせざるを得ない。こんな感じです。

これだけ忙しいと、部署の飲み会とか歓送迎会とかを予約しても人数揃って時間通りにお店に行くなんてまずできない。それに幹事はたいてい若い人がするだろうから付き合いのあるお店なんてまずない。だからとりあえずネットで探して、なんとなく良さそうなお店を予約するしかない。大抵は食べ物にこだわりがあるわけじゃないから場所さえ確保できればいい。で予約したら、上司から「牡蠣きらいだ」みたいなリクエストが出てきて別の店を予約。若いから気が利かず、最初のお店にキャンセルするのをうっかり忘れてしまった。「悪いことしたな」、いやいや。

この時の若い幹事の気持ちは「悪かった、悪かった、わがままな上司で運が悪かった」くらいですよ、きっと。食べ物に興味ないとそんなもんです。さて、お店に行ったら「サービスは悪いし、味も悪いし、2度と行かない」みたいな店だったら「お前幹事失格だな」という評判が車内でついちゃいます。そうして飲み会とか飲食店が嫌いになり、平気でノーショウをするようになる。

どうすればいい?

こういう問題は、お店と客のどっちが悪いなんて言ってもしょうがないし解決しない。なぜなら悪質な客はいるし、悪質なお店もあるし、どっちが悪いなんて一概に決められない。愚痴を言っても始まらないので、お店の人、お客さん双方の立場から建設的に考えてみましょう。

お店の人へ

まず言いたいのは、商売に走りすぎている店は本質的に飲食店に向かないと思います。そういう店はノーショウされて怒るなってことです。こんな話はどうでもよくて、まっとうにやっているお店はどうすればいいか。

ノーショウするのはたいてい一見の客だろうから、なるべく常連とその紹介で回るような素敵な店になるよう努力するのが最大のノーショウ予防策でしょう。だから通りで客引きしまくるとか、ネットとか媒体に広告出すなどの方法でしか新規客を得られないなら、ノーショウ対策はたぶんできないです。

それと食べログとかを見て一方的に連絡してくる人は一定の割合でいるでだろうから、そういう人の予約を取る場合は、キャンセルポリシーを明確に伝えて、カード番号を控えるとかして自衛するっていうのは一つの手でしょう。どの程度ポリシーを厳しくするかはさじ加減があるでしょうが、ポリシーを明確にするだけでも少しは違ってくると思います。インターネットって匿名の世界だから善意に基づくだけでは限界です。「そんなことしたら客が来なくなる」って聞こえてきそうだけど、もし本当にそれだけで客が来なくなったら、その程度の店だってことです。

まっとうにやってる店なら必ず同業とかお客さんのつながりができてくるから、いざノーショウとか大人数のドタキャンが出た時にSNSなどで告知すれば、みんなが協力してお店に来てくれるかもしれない。横のつながりがノーショウのセーフティネットを果たすようになります。もちろんこれだけでノーショウを100%回避できるわけではないでしょうが、ないよりましでしょう。

お客さんへ

まず会社の飲み会や接待などでネットで探したお店に初めて行くっていうのはイケてないと思ったほうがいい。なぜなら、どんな店かも分からない、どんなお店の人がいるのかも知らない、そんな初めて行くお店で同僚やお客さんが満足するか?ってこと。こういう飲み会の場合、たいていは行ったお店の名前を参加者の一人として覚えることなく終わるだろう。当然幹事をした人の評価も上がらない。

こんな事態を避けるには、行きつけの店をいくつか持っておく必要がある。行きつけの店を持つには食事に対する感度を高めるしかなくて、いつもお昼はコンビニ弁当とか、チェーン店の牛丼とか富士そばを食べてると絶対にいいお店は見つけられない。いつもは弁当でも、週に一度のランチはオーナーシェフがやってそうなお店を探して行ってみるとか、そういう努力が必要。ランチでまっとうなら何度か行ってお店の人と知り合いになり、そして夜の営業も行く。

こういうことを時間をかけてお店の人と信頼関係を築いていけばすっかり常連になれます。一度常連になればしばらく行かなくてもお店の人は必ず覚えているから、いざ飲み会とか接待というときに、すごくよくしてくれます。そもそも、口コミサイトでいいお店を見つけようなんて厚かましいにもほどがあって、世の中そんなに自分だけに都合よくできていないんです。いいお店の情報は時間をかけて自分の足とお金を使うことでしか得られないです。

相手を知ることでしか解決しない

結局ノーショウを解決する方法なんてなくて、お店の人も、客の立場の人も双方相手を理解するしかないでしょう。飲食の人はサラリーマンの大変さを少しでも理解して、お客さんはお店の人の苦労とか食材の大切さを知る。こういう意識をお互いに育てるしかない。

これが面倒くさいならそれまでで、「自分は客だから」と思ってネットで楽してお店を探すような人はいいお店はには一生巡り会えないし、一方、お客さんを金儲けの対象としてしか見てないようなお店の姿勢だとノーショウやドタキャンからは逃れられないでしょう。

こちらもぜひ読んでください。飲食店をドタキャンする人が増えたのは、美女にもてたい男が複数店舗を予約しておき、女の行きたい店に行って他はすっぽかすからだった。怒り心頭です。

このブログを書いてる人
早川 朋孝

業界15年ウェブ運用の専門家です。データ分析やシステム導入の提案などをガッツリやってます。まっとうな情報のインプットとアウトプットを地道に継続することに重きをおいていて、月140時間は本を読みます。ワインとクラシック音楽とネコをこよなく愛し、タバコとトンデモ・ニセ科学は嫌い。明治学院フランス文学科卒。

facebookへ