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【書評】BlackBox 伊藤詩織著

2017年10月23日 書評/その他
blackbox 伊藤詩織

渦中の本だ。
ジャーナリストの詩織さんは、レイプ被害に遭いその加害者とされる山口敬之氏が不起訴となったと会見した。この会見が話題になったのは記憶に新しい。本書はその一連の経緯を綴った手記で、結局フルネームを出しての出版となった。発売日は投票日前の2017/10/18だが、「選挙前のこのタイミングで発売なんて売名行為だ」みたいなイミフな言動をネットでみかける。例えばこれとか。

普通に考えて執筆締め切りとか発売のスケジュールが決まってた後で、急に選挙になったと思うのだが。何を根拠にこんな炎上商法とか、政治的意図とか断言できるのかよくわらかない。本書を読めば分かるが、著者は幼いときから行動的で気が強いタイプのようで、こういう奔放な女性を嫌う人が世の中に少なからず存在するであろうことは、容易に推測できる。そういう人が上記のような発言をするものと推測される

サードレイプ

男性にはとうてい理解できないが、レイプ被害に遭ったと女性が会見するのはとても勇気が必要だったのだろう。その内容に対してなぜか罵詈雑言が発生する。興味本位で人が傷つくのをなんとも思わない人がたくさんいるのだ。著者は会見で、今国会に提案されている性犯罪厳罰化を柱とする刑法改正案は、いわゆる「共謀罪」の審議を優先するために議論が先送りされていたため、これについて「きちんと取り上げられるべきだ」と主張した。この限りなく部分的な主張を受けて、過激な解釈をする人が多いのだ。

上旬の政治的な意図というのは、BlackBoxを読めばわかるが、加害者とされる山口敬之氏が安倍政権に近いとされていて、そして詩織さんの担当弁護士が民進党の仕事をしているから、民進党の敵対勢力である安倍政権攻撃のために選挙前に本を出したというのだ。

冷静に考えれば、明らかに加害者でもなんでもない人の実名を挙げて「この人レイプ加害者です」と主張する本を出せるはずがない。そんなことすれば名誉毀損で逆に訴えられるからだ。著者の主張には根拠となる客観的な事実がある。にもかからずそれを根拠なく糾弾する人がいるのだ。この国のこういう状況も正体不明のBlackBoxだ。

この本の重要な部分と言えるのはp214〜p215だろうが、ここに弱点がある。山口敬之氏が北村氏という人物あてのメールを誤って週刊新潮の編集部に送り、その誤送信されたメールから、「北村氏」は政権の中枢にいる北村滋氏であろうと判断をするのだ。この部分が推測に過ぎないためやや根拠が弱いのが残念だ。記述を読む限りあくまで推測に過ぎないため、著者の主張する「山口氏のまわりには総理周辺の人が多い」という根拠が弱く感じられてしまう。

とはいえ、勇気を出して会見した女性をいじめる構図がこの国にあるのは明白で、この状況をサードレイプと定義しようと思う。ファーストレイプは最初の事件。セカンドレイプは警察の取り調べが非常に屈辱的だったと本に書いてある。この事実が日本が女性にとっていかに生きづらい社会かを明確に示している。昨日の選挙で当選したのは男の議員ばかり。この国にはもっと女性の目線が必要だと思う。

しかし、それも当面は困難だろう。なぜなら、あれだけ非難されて防衛大臣から離れた稲田朋美氏が福井1区でぶっちぎり当選している事実から見て取れる。

日本には保守的で旧体質な人がまだまだ多いのだ。いくら女性目線が必要でも、稲田氏は、ねぇ。「このハゲ」発言の元議員人とか、上西小百合氏とかではなく、この国にはもっと優秀な国会議員の女性の目線が必要だと思う。

このブログを書いてる人
早川 朋孝

業界15年ウェブ運用の専門家です。データ分析やシステム導入の提案などをガッツリやってます。まっとうな情報のインプットとアウトプットを地道に継続することに重きをおいていて、月140時間は本を読みます。ワインとクラシック音楽とネコをこよなく愛し、タバコとトンデモ・ニセ科学は嫌い。明治学院フランス文学科卒。

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