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日大のタックル問題と杉田水脈氏の「LGBTは生産性がない」発言に共通すること

2018年07月31日 社会書評/社会

日大のタックル問題の第三者委員会による最終報告が出た。https://digital.asahi.com/articles/DA3S13614058.html
この記事の衝撃の一部分も引用する。

最終報告書によると、問題発覚後の5月、理事だった井ノ口氏が反則をした選手に、監督らの指示がなかったと説明するよう暗に要求。「(同意すれば)私が、大学はもちろん、一生面倒を見る。ただ、そうでなかったときには日大が総力を挙げて潰しに行く」と言ったという。日大職員による口止めも認定した。

日大の理事という権力者が一学生を脅しているのだ。大人気ないですね。。この日大タックル問題も、杉田水脈氏の「LGBTは生産性がない」発言も、どちらにも共通するのは権力者による弱い者いじめである。社会一般の感覚とあまりにもずれている。

日大は自分の地位を守るため、杉田水脈氏は極端な言説によって支持を集め自身の利益にし、その利益のために平気で弱者を攻撃している。両者の振る舞いや言動は常識ある人の目に触れることで批判の嵐にさらされるが、極論はしぶといので簡単には消えない。なぜなら極論をかざす人はそれを生活の糧にしているから、簡単には引っ込めないのだ。

そして極論は目立つ故に炎上しやすい。多くの人の目についた結果、極論に接した弱者は深く傷つくのだ。というわけで、自身の利益のために平気で他者を傷つける、特に社会的立場の強い人の極論には「No!」と強い声を上げるのが必要だと思う。黙っているのは認めるに等しい。

杉田水脈氏は衆院議員という立場にありながら極論、陰謀論を売りにしている。新潮45のコラムもひどいが、こちらの【杉田水脈のなでしこリポート(8)】「保育園落ちた、日本死ね」論争は前提が間違っています 日本を貶めたい勢力の真の狙いとは…http://www.sankei.com/premium/print/160702/prm1607020006-c.htmlも異常なひどさである。わざわざ読む必要もない文章だが、杉田水脈氏の知的水準の低さを物語る部分を引用する。

私は昨年から何度も国連本部に足を運び、そこで行われていることを自分の目でつぶさに見てきました。日本国内の「日本を貶めたい人々」が、中国をはじめとする海外勢力と手を取り合って活動をしているのが国連委員会の実態であることに気が付いたのです。

旧ソ連崩壊後、弱体化したと思われていたコミンテルンは息を吹き返しつつあります。その活動の温床になっているのが日本であり、彼らの一番のターゲットが日本なのです。

こんな何の実証性もないことを平気で衆院議員が堂々と投稿しているのである。うっかり発言ではなく(おそらく推敲しているであろう)文章である。驚くほかないよね、これは。こういう極論がある事実に対して、私たちはどうすればいいのか?まずは極論について正しく知ることだと思う。この欲求を満たす優れた新書がある。古谷経衡氏の『日本を蝕む「極論」の正体』だ。

極論の正体

古谷経衡氏は極論をこう定義づける。

そもそも極論はどのように発生するのだろうか。ごく簡単い言えば、競争のない、閉鎖的な集団や組織から極論は常に発生する。外部から見えづらい、つまり第三者から監視・監査されない「内向き」の組織や団体の中での物言いは、次第に極論となり沸騰してくるが、その内部にいる人間たちには正論として信じられてしまう。

一旦、この内向きの組織に取り込まれた人々は、もともと常識人であってもその強烈な同調圧力の中で次第に極論を正論と思い込むようになる。これが極論発生のメカニズムである。身内でしか通用しない特有の言い回しをジャーゴン(組織内言語)という。

日本を蝕む「極論」の正体 p8

日大タックル問題は明らかに世間一般の目に触れない環境でおきたことだ。また、杉田水脈氏は似非ではあるが「保守」と自称し、極端な言論をして喜ぶ人を支持層としている。上の引用から分かる通り、杉田水脈氏の新潮45のコラム、上で紹介した産経のコラムも杉田氏の支持者に向けたもので、そういう人たちとの閉じられらネットワーク内でコミュニケーションをとってきた杉田氏は、元の知的水準の低さも手伝って、自分で作った極論をすっかり信じるようになったのだろう。きわめて閉鎖的な空間でのみメッセージを発している感覚のため、視野が狭いのだ。もし杉田氏にまっとうな見識があれば、差別発言などするはずもない。

なんてことはない、若い人が仲間内のSNSだけで通用する表現を使っているのと同じ感覚なのだ。しかし、杉田氏は衆院議員であり、弱者を傷つける表現が許されるはずもない。自身が公人であることを忘れ差別表現を平然とする杉田氏は、繰り返しになるが相当知性が低いと言わざるを得ない。『日本を蝕む「極論」の正体』には杉田水脈氏のように閉鎖的な世界で生きる人がたくさん事例として紹介される。

例えば、古谷経衡氏の通っていた中学では、生徒を番号で呼び持参の大麻を自慢する技術の先生Tや、ブリティッシュ英語の本流から外れた発音をする生徒を侮蔑英語教師のG。さらに180センチを超える巨?で生徒をビンタする体育教師のUなど今の常識では考えられないイカれた教師がたくさんいたらしいが、彼らは授業参観のときだけは、どの先生も終始笑顔だったらしい。

しかし彼ら教師は、自らの行為が無法であり、公の目にさらされると非難を浴びる理不尽なものであると自覚していたからこそ、唯一、第三者から監視・監査の目が入る授業参観日だけには、羊のようにおとなしく常識人に戻ったぶりをするのである。

日本を蝕む「極論」の正体 p31

愚かな教師たちでさえ自身の理不尽さは一般的でないと自覚していたのに、平然と公に極論を公表できる杉田水脈氏はバカを通り越している。杉田氏の知性の低さは、下記に引用する女性に匹敵するのではないだろうか。古谷経衡氏が三宅洋平氏の選挙対策本部に取材に行ったときのことだ。

帰り際、選対のいりぐち付近に、大きな鳥かごを持った中年の終始ニコニコ笑っている三宅支持者を名乗る女性に出くわした。籠の中には、インコ(だと思う)が入っている。女性曰く、「放射線が強くなると、この子(インコ)が鳴き声で教えてくれるんです」。

私は返す言葉がなかった。

日本を蝕む「極論」の正体 p81

私も杉田水脈氏の新潮45のコラムを読んだが、論理構成が破綻していて支離滅裂。政治家が出す文章とは思えず、あまりのひどさに読んだ後は言葉がなかった。新潮45のコラムについてはこちらに詳細

おまけ

日本は女性議員が少ないとされているのに、杉田水脈氏に続いて、小林ゆみ杉並区議会議員という知性の低い女性政治家が出てきた。こういう政治家の言説を見ていると女性の議員は増えないほうがいいと錯覚してしまう。両者とも知性が低すぎる。女性議員が女性の政治進出を阻んでますぜ。

このブログを書いてる人
早川 朋孝

業界15年ウェブ運用の専門家です。データ分析やシステム導入の提案などをガッツリやってます。まっとうな情報のインプットとアウトプットを地道に継続することに重きをおいていて、月140時間は本を読みます。ワインとクラシック音楽とネコをこよなく愛し、タバコとトンデモ・ニセ科学は嫌い。明治学院フランス文学科卒。

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