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私たち人間はいずれ絶滅する 【書評】6度目の大絶滅

2018年09月25日 書評/ノン・フィクション書評/環境問題

6度目の大絶滅 女性ジャーナリストによる環境問題の体当たり取材の作品。パナマの黄金カエルを見たかと思えば、海底火山を求めて極寒の深海を潜り、コウモリを探しにニューヨークの洞窟で調査し、森林を調べるのにアンデス山脈を踏破し、グレートバリアリーフで方向を見失ったり、本書の読者は大絶滅の証拠を巡るツアーを楽しめる。いながらにして世界中の大自然に触れられまさに読書の醍醐味を味わえるのだが、そんなに明るいばかりの本書ではない。私たちは地球で進行している6度目の大絶滅の真っ只中にいて、いずれ私たち自身も絶滅すると著者は言うのだ。

本書によると地球はこれまで5度の大量絶滅が起きていて、よく知られている隕石衝突や、火山活動、氷河期到来など、いずれも突然の大規模な自然災害で多くの種が消滅したのだが、今回は事情が違う。恐竜時代には1000年に一種だった絶滅が今は毎年推定4万種のペースで人知れず進行しているのだ。このままでは2050年には種の半分が消えてしまうかもしれない。小さい子供がいる人は想像してみてください。その子が大人になって活躍している頃には、今より種の半分が減っている世界かもしれない。それによって引き起こされる生態系の破滅は、想像するだけで恐ろしい。

何が起きているのか?黄金のカエルが姿を消しつつある熱帯雨林、コウモリがバタバタと死んでいる北アメリカ東部。いずれも他の地域から入ったらしいカビが犯人だ。そしてそのカビをもたらしたのはもちろん私たち人間だ。著者の論旨は明白で、過去最悪の絶滅を起こしているのは「外来生物」としての人間なのだ。グローバル化によって私たちは、それまで個別に独立していた地域をつなげてしまった。このかつてなかった段階を地質学では「人新世(アントロポセン)」と呼ぶ人もいるほどだ。それくらい、人が環境に与えた影響は大きい。

人新世の著しい特徴の一つは、地理的分布の原理が破綻してしまったことにある。高速道路や皆伐地、大豆のプランテーションが土地を分断し、陸の孤島を形成する一方で、グローバル規模の交易や旅行はその逆を成し遂げた。最果ての島ですら、その辺縁性をはぎとられたのである。

p258

グローバル化といっても近代のグローバル資本主義だけを指しているわけではなく、マンモスの時代からの話だから始末が悪い。ヒトは古代から意識せずに環境に影響を与えて、動物の絶滅を促進してきたのだ。

ごく少数のヒトの集団、たとえば百人ほどでも、千〜二千年もあれば、記録に残るほぼすべての絶滅の原因となるほど十分な数に増えることがわかった。しかも、これはヒトの狩の腕前が「やや未熟」から「並」と仮定した場合の話だ。ほんのときおり機会があったときにだけ、マンモスや地上生のオオナマケモノを狩り、それを数世紀にわたって続ければよかったのだ。たったこれだけのことで繁殖率の低い種は減少しはじめ、いずれ絶滅にいたる。

地球の歴史という観点から見れば、数百年や数千年は実際にはないに等しい。けれども人間から見れば、それは長大に思える。実際にその場にいた人にしてみれば、巨大動物の減少はあまりに緩慢で、それとは気づかなかっただろう。数世紀前に、マンモスやディプロトドンがもっとたくさんいたと知る術は彼らにはないのだ。

p303〜304

しかし、現代起きている絶滅の速度は古代やマンモスの時代とは比較にならないほどの規模だ。外来種のヒアリが日本各地の港に侵入したニュースは記憶に新しい。大規模な物流ネットワークが張り巡らされた現代(人新世)は、かつて地球が経験したことのない状況なのだ。このままでは、やがて生態系の頂点にいる人類も滅びてしまう。著者は「人類は自分がとまっている枝を切っている」とまで言っている。

本書を読むことで自分の住んでいる今の地球環境がどんな状態なのか知ることができるし、読み物として純粋に面白い。特に若い人とトランプ大統領にはぜひ読んでほしいな。

このブログを書いてる人
早川 朋孝

業界15年ウェブ運用の専門家です。データ分析やシステム導入の提案などをガッツリやってます。まっとうな情報のインプットとアウトプットを地道に継続することに重きをおいていて、月140時間は本を読みます。ワインとクラシック音楽とネコをこよなく愛し、タバコとトンデモ・ニセ科学は嫌い。明治学院フランス文学科卒。

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