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『「この中でお医者さんいますか?」新幹線で“皮膚科医”が思わず取った行動とは?』に感じた違和感の正体は極論だったから

2018年10月19日 インターネットのこと/つり記事じゃね?

まずはこの記事を読んで欲しい。「この中でお医者さんいますか?」新幹線で“皮膚科医”が思わず取った行動とは?

この記事を何も考えず読むと「あ〜そうなんだ、医者も大変だな」と面白く読めるのだけど、結果から言うとこの記事は極論だ。読むとなんとなく違和感を感じた。よく分からないけど、話がちょっと出来すぎかなと。で、知り合いの医者に「これ、どう思う?」とLINEで聞いてみた。そしたらこんな回答がきたよ。

  • 医者には応召義務がある → これは本当
  • 専門外の緊急治療をミスったら医者は自己責任を負う → 極論+場合による
  • 医者は科によって全然違う。皮膚科の先生が心臓マッサージを正しく行えるのか疑問だ。 → つまり上記文中の皮膚科医がドクターコールに応じたところで、専門が違いすぎて対応ができないことが多々あるだろうってこと

「皮膚科専攻のメディア得意な先生がなんか言ってるくらいに捉えておけばいい

冒頭で紹介した記事を読んで、知り合いの医者は「皮膚科専攻のメディア得意な先生がなんか言ってるくらいに捉えておけばいい」と返答があり、なるほど、違和感の正体はこれだったのか、と納得しました。そんな違和感だらけの記事に対してコメント欄を軽く見ると、称賛の嵐ではないか。煽り記事にひっかかりすぎでしょ。

冒頭で紹介した記事は<医者は応召義務はあるけどミスったら自己責任である>という部分を強調したいがために、かなり誇張されています。最後に付け加えられた美談のような落ちが、それに拍車をかけてるでしょ。

なぜそう言えるかというと、冒頭で紹介した記事をちゃんと読めばわかるんだけど、皮膚科医はドクターコールに応じたけど結局何もしてない。最初の件ではすでに別の医者が対応してた。2度目の件では救急隊員が対応して出番はなかった。実際に交通事故現場に皮膚科医が出くわしても、専門外なら応急処置くらいしかできないでしょ。それなのに記事中では「ミスったら自己責任」を強調している。だから極論なのです。

日本の航空会社は部分的に責任とってくれるとか、海外の事例を引き合いに出して日本の医療現場はダメだと言いたいのだろうけど、それにしても極論すぎる。

まとめ

知り合いの医者の意見を整理するとこんな感じです。

  • 皮膚科医がドクターコールに応じてもたいして力になれない
  • 医者には自分の専門外の分野であっても応召義務はある
  • それでミスったら自己責任というのは、確かにそうなのだけど極論

この文章が捏造だと言っているわけではないし問題提起という側面はあるにせよ、なんとなく無理やり感動させるあおり感は拭えないのだ。先日オセロ少年が乗った飛行機の機長が前回の最年少チャンピオンだった件、調べたら奇跡でもなんでもないよに書いた通り、煽ってたくさんの人に読ませて広告費を稼ぐのがメディアです。メディアの記事内容はあまり真に受けないほうがいいんじゃないかな。

このブログを書いてる人
早川 朋孝

業界15年ウェブ運用の専門家です。データ分析やシステム導入の提案などをガッツリやってます。まっとうな情報のインプットとアウトプットを地道に継続することに重きをおいていて、月140時間は本を読みます。ワインとクラシック音楽とネコをこよなく愛し、タバコとトンデモ・ニセ科学は嫌い。明治学院フランス文学科卒。

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