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暴力団は濡れ手にアワビで100億円、築地のアワビの半分は密漁品だって。『サカナとヤクザ』

2018年12月22日 書評/ノン・フィクション
サカナとアワビ

レストランで食べるアワビ、豊洲市場で売ってるアワビも、その半分が密漁だとしたらあなたはそれでもアワビを食べますか?私は食べます。。。。アワビLOVEな人がどれくらいいるか知らんけど、いやしかし、この本を読むと安易にアワビを食べますと言っていられなくなる。だってアワビ食べるたびにその半分が暴力団のシノギになっているわけですよ。「濡れ手にアワビ」なんて表現があるくらい儲かってるらしい。

本書は著者:鈴木智彦氏が5年に及ぶ取材をした渾身のルポです。著者は築地で4ヶ月アルバイトをしたり、ときに取材の過程で密漁団に勧誘されたりと、地道な取材を敢行した。参考文献も多く、綿密な取材・調査を伺わせる本書は漁業とヤクザの根深い歴史を暴いている。

漁業権と暴力

漁師というと荒くれ者のイメージが強いが、実際に彼らは荒くれなのですよ。というのも、漁師が漁業をする根拠となっている漁業権は日本にしかない法律で、暴力と結びついているのです。だって、「この海域はオラが村のもんだけが魚釣るよ」とよそ者に言うときに腕っぷしが強くないとそんな主張も通らないから。実際に漁業権を巡って争いは多かった。

歴代、漁業権は村の有力者に与えられ、網元や庄屋が独占していた。かつての鰊粕(にしんかす)のように、魚は田畑の肥料でもあり、漁業権は漁村のみならず、農村にとっても重要な資源だったため、たびたび争いが起きた。村々の水争い同様、生存に直結する問題で、地引き網の場所争いが激化し、死人が出たこともある。村同士の抗争を仲裁するためには明確なルールが必要だった。そこで権力は、基本的に村の前の海は住人のものという漁業権を定めたわけだ。

この漁業権なるものは、文献を遡ると大宝律令にまで遡るもので、その歴史は古い。明治政府も日本の領海を官有化しようとしたけど長年の慣行を崩せず頓挫し、さらにGHQもやはり漁業権を改革しようとしたが失敗した。それくらい漁業権なるものは根強いものなのです。そして、暴力を前提とした権利である以上そこに暴力団が絡んでくるのは必然でしょう。密漁に関しては日本は無法地帯で、密漁は暴力団の重要な資金源になっている。

平成15年7月の『養殖』に掲載された多屋勝雄の記事だ。これは全国のアワビ流通量から漁獲量と輸入量をマイナスし、他の要素を考え合わせて密漁の規模を割り出している。それによると、日本で取引されている45パーセント、およそ906トンが密漁アワビの計算になる。我々はアワビを食べる時、2回に1度は暴力団に金を落としているということである。市場に流通する半分が密漁アワビ、言い方を変えれば盗品というのは異常な事態という他ない。

アングラアワビの売り上げをキロ4000円で計算すると密漁の市場規模は約40億円にも上る。アワビ一品だけでこれだけの額だから、ウニやカニ、黒いダイヤと呼ばれるナマコ、シラスウナギ、大アサリ、秋鮭などを含めれば、軽く100億円産業となるだろう。

100億円産業ですよ。先日のpaypayのキャンペーンが100億円だったけど、すごい経済効果を生みましたよね。それだけの大金と同等の額が、暴力団や密漁団の稼ぎになっているのです。東北にはそういうアワビ御殿やらナマコ御殿があるらしいです。 密漁天国と言える状況で、警察や海上保安庁は何をしてるんだと思うかもしれない。彼らもちゃんと仕事をしているけど、法制度やその他理由でその活動には限界があることが分かる。

  1. 密漁で儲ける金額に対して刑法が軽すぎる。
  2. 密漁に対する法律は地域によって異なる。地域によって穫れる魚類や時期が異なるため。
  3. 漁業人口が減って、密漁団を監視する人そのものが減っている

まず上記一つ目の濡れ手にアワビであることがよく分かる箇所が本書にあったので、その部分を引用します。

ところが漁業法の改正以降、非漁業者による密漁事案が激増してしまった。”漁業”法を適用するためには、その密漁が業(仕事)であり、反復して継続することを立証しなければならないからである。密漁団は現行犯逮捕という有無を言わさぬ状況でも、「密漁をやったのは初めて」と何食わぬ顔で偽証する。本件のことは自供しても、これまでのことはうたわ(自白し)ない。

そのため取り締まる側は仕方なく、目に見える違反で検挙するしかない。

「ヤツらは捕まった事件に関してはうたいます。否認ばかりしていたら裁判官の心証が悪くなるからです。現行犯逮捕されたことはゲロするけど、いままでやってきたことは絶対言わない。業として密漁していることを立証できない。でもアワビは漁の時期が決まっているから禁漁期間に穫れば密漁です。3月1日から10月31日までを禁止期間にしている。漁師も穫れない時期です。9センチ以下は獲るのをやめようという殻長制限もある。これは終年違反です。仕方なくそれで送致するけど、岩手県の漁業調整規則の法定刑は6ヶ月以下の懲役、または10万円以下の罰金。ヤツらのボロ儲けに比べれば安いですよ。これを変えられないんですよ」(海保職員)

二つ目も上記引用の通り<岩手県の漁業調整規則の法定刑>と県を限定した記述があることから、都道府県によって法定刑が異なることが分かる。そして三つ目は日本の人口が減っている点。これは実際のデータを見たほうが早い。『日本国勢図会』のデータを借ります。横着して写真ですがあしからず。

漁獲量

2000年からの12年で漁獲生産量が激減しているのがわかります。人口が減るまたた高齢化 → 漁師が減る → 漁獲量も減る。という構図が見えますが、漁師が減るということは密漁する人を監視する人そのものが減ることを意味します。加えて東北の震災で一帯は壊滅的な打撃を受け、密漁団はやりたい放題。ここまでの無法地帯はそうあるものではない、と著者は書きます。儲かりすぎて、仲の悪い暴力団同士が協業するほと儲かってる。

平成27年夏、山口組から離脱した一派が神戸山口組を立ち上げ、いまも抗争状態が続いているが、それ以降、北海道では6代目側の中核団体である弘道会傘下組織組長と、神戸山口組の中心である山健組系列組長が兄弟分になっている。あり得ない呉越同舟を成立させるほど、密漁はでかいシノギなのである。

こういうのを読むと、さっさと漁業権なんて廃止すればいいと思うけど、強力な権力を持っていた明治政府やGHQでもできなかったことが、今の自民党にできるとは思えない。人口も減っている。漁獲資源も減っている。日本の漁業はあまりいい未来ではない。暗く書いてごめんね。

密漁しちゃいますか

この本を読むと「こりゃ、おれも密漁団にでもなるか」と思う人がいるかもしれないけど、それなりにリスクもあります。まず冬の北海道の想像を絶するほど厳しい冬の夜の海を潜る必要があります。もうこの時点で無理っしょ。そしてリアルドラクエのようなこともありえるかもしれない。突然モンスターと出くわす的な。

「夜の海に慣れちゃうと、昼のほうが怖いですよ。見たくないものまで見えちゃうんで。大きな岩にびっしりと昆布がはえてると、この昆布の奥になにかいたらと思ったら怖くないですか。見えると想像しちゃう。亡霊だってライトがないと見えません。ただオホーツクにはシャチがいるんですよ。鉢合わせしたら諦めます。

シャチ、、そりゃ生身の人間が海でシャチに出くわしたら諦めるしかないわね。。
※本記事は密漁団になるものを推奨するものではありません

このブログを書いてる人
早川 朋孝

ウェブ業界15年のウェブコンサルタント・アナリスト。大手牛丼屋や東京オリンピック関連サイトなど大企業から中小まで幅広いウェブ運用に従事し、700社以上のアクセス解析やサーバー管理、100社以上のSSL設定を経験。

悪徳ウェブ業社の背景には、過激な営業活動をしないと案件を取れない体質がある。ウェブ制作会社や受託開発会社が案件をとるために無茶な条件でも契約して、その結果赤字になり社内が疲弊しみんな辞めていき、そして社内にノウハウが蓄積せず顧客に対して責任を果たせない。こういう場面を何度も見てきた。身の丈にあった案件の規模や数でやりくりするのがモットー。

趣味は読書。毎年年間の読書計画はだいたい決まっているが、寄り道ばかりで守られたためしがない。

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