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10連休に時間がある人はこの本読んどき「おすすめの10冊」

2019年04月25日 書評/学習書

間もなく10連休が来ますが、「ぶっちゃけ暇だよ」という人も多いでしょう。どうせ時間があるなら、連休後に賢くなっている本を読んでおけばお得です。ゲームも映画も飽きたという人は、気になる一冊を手にとってみてください。

仕事でパフォーマンスをあげたい人

ここに紹介するのは将来仕事で高パフォーマンスを発揮したいという野心的なあなたにおすすめの本です。ただし、いずれの本も一度読んだだけでなにかが身につくようなものではありません。まとまった時間があるときにじっくりと向き合うような類の本です。

君主論 マキャヴェリ

まずはニコロ・マキャヴェリの『君主論』を挙げます。マキャヴェリは15世紀のフィレンツェで活躍した外交官です。当時のイタリアは今と違い都市国家でばらばらの状態でした。しかしフランスやスペインなどは強大な中央集権国家をなしており、イタリアはそれらの強国にたびたび侵略されていたのです。その状況を憂えたマキャヴェリが、祖国を強くするにはどうすればいいかを整理して進言したのが『君主論』です。

『君主論』をかいたときマキャヴェリは外交官という身分から追われた状態でした。そこに返り咲くためにメディチ家に『君主論』を捧げたのですが、結局再び外交官になることはありませんでした。そういう状態で書かれたものであるために、非常に野心的な内容であり、またメディチ家に対するおべっかなどもあり、ルネサンスの時代の人も今と同じ1人の人間であったことがよく分かります。

『君主論』はリーダーにかくあるべしと説く内容なので、多くの経営者が読んでいます。経営者に支持される名著なのだから、その考えのベースになるものをあなたも読んでおけば、経営者という人たちがどういうふうに考えて、どういう行動をするか、少しは学べるでしょう。また実用的な観点からも至言に満ちています。ぜひ読んで欲しい筆頭ですが、ふだん読書しない、歴史も知らないという人がいきなり岩波文庫の『君主論』を読んでもまったく理解できないでしょう。そういう人は手始めに『NHK「100分de名著」ブックス マキャベリ 君主論』、塩野七生の『わが友マキアヴェッリ』などを読むといいです。

いかにして問題をとくか G. ポリア

かなり抽象度の高い難解な本ですが、名の通った企業で新入社員の教科書として採用されているそうです。数学的な思考をベースにして、未知の問題にどう取り組むかについて書かれています。高校数学をある程度は理解していないとはっきり言って理解は困難でしょう。それだけにそういった山を超えてこの本にアプローチし書かれている内容を消化できれば、今後仕事を進めるうえでかなりの力になります。

ファスト&スロー ダニエル・カーネマン

『ファスト&スロー』は「人は易きに流れる」ことについて様々な研究や実験をベースに繰り返し述べていきます。読めば思わず膝をうつような記述が次々に登場し、何度も繰り返し読んで読書ノートも作成した本です。高度な内容の行動経済学について平易な言葉で、しかも水準を落とさず説明してありコストパフォーマンスのたいへん優れた本です。例えば、こんな感じの文体です。

嫌悪感にくわしい心理学者のポール・ロジンは、サクランボが山盛りになった器にゴキブリが一匹いただけで台無しだが、ゴキブリがいっぱいのバケツにサクランボが一粒混じっても何の感情も引き起こさない、と指摘する。ロジンの言うとおり、いろいろな意味でマイナスはプラスを圧倒するのであって、損失回避も、そうした一般的なマイナスの優位性の一種ということができる。

この本にかかれているような基本的な人間心理をふまえておけば、ビジネスの場において、それが社内であろうと社外であろうと、自分の有利なように動くことができるかもしれません。あるいはマーケティング本としても活用できます。熟読に値します。文庫で売っていて、たいていの本屋においてあります。とりあえず読んどけ。

家に居ながら冒険したい人

「連休中はどこに行っても混んでるし、外に出る気はない。でも冒険したい。」という欲張りなあなたにおすすめなの珠玉の2冊。

死に山

去年読んだ本でもトップクラスの面白さでした。冒険小説ではないけど、ノン・フィクション・ミステリーとでもいいましょうか。1959年2月1日、9人のロシアの大学生の登山チームがウラル山脈北部で遭難し全員死亡した。死因は低体温症と外傷だった。女性二人を含む9人の若者は登山経験が豊富だったにもかからず、なぜこのような悲惨な目に遭ったのか。ディアトロフ峠遭難事故として有名なこの事故は、その不可解さから様々な憶測を読んだ。詳しくは書評『死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』 著者:ドニー・アイカーを参照されたし。

旅のラゴス 筒井 康隆

『旅のラゴス』は読書家の夢みたいな一冊。主人公は不思議な世界の極北を美女を求めて旅したかと思えば、とつぜん奴隷になったり、はたまた読書で得た知識をもとに王様になって若い美女を二人もめとったり、彼の人生は波乱万丈。ページ数は少ないので気軽に読めるのも嬉しい。これなら読書が苦手な人でも必ず読み通せます。

少しくらい賢くなっておこうという人

一般常識がないからなんとかしたいと自覚している人は、ここに紹介するような本を読むといいかもしれません。

岩波国語辞典

本というか辞書ですが。たいていの人は辞書を「ひく」ものと思っているでしょう。しかし、辞書を本のように初めから最後まで通読してみてください。知らない言葉がたくさん出てくるし、なんとなく知っているだけの言葉が「あ、ホントはこんな意味だったのか」と目からウロコが何枚も落ちます。それだけではありません。以下のように随所に面白い記述がたくさん出てきます。

あかんべ
下瞼のうらの赤いところを出して、軽蔑拒否の気持ちを表すこと。あかんべえ。あかめ
言い出しっ屁
臭いと言い始めた者が、実はその放屁の当人であること。転じて、何かを言い出した者が、そのことをまずめるはめになること。

まとまった時間がないとできないことがありますが、辞書の通読はまさにまとまった時間がないとできないことです。なお、三省堂でも旺文社でもなく、あえて岩波をおすすめするのは、作家の佐藤優さんが「岩波国語辞典はバランスがいい」とおすすめしていて、その受け売りです。なお、辞書の成立過程に興味がある人は、三浦しをん氏の『舟を編む』も面白いのでおすすめです。

ファクトフルネス ハンス・ロスリング

多くの人は世界の多くの地域がまだ貧しいままだと思っている。しかし実際は違う。丁寧にデータを見ると、今日の世界はかつてに比べると比較にならないくらい豊かになっているそうです。驚くべきことに学者や研究者でさえこの事実を知らない。詳細はiOSのアップデートは毎年あるけど、人の知識はアップデートされないせいで勘違いして損してる『ファクトフルネス』を参照されたし。

10万個の子宮 村中璃子

世の中にはトンデモといって、自分の商売や立場を確保するために非科学的な言説を平然と繰り広げる人たちがいます。こういう人たちの何が問題かというと、しつこくロビー活動をするので、それに騙される人たちが多くでてきてしまうという点です。結果としてトンデモは公益を害しているのです。だから彼らを放置しておくわけにはいかない。その最たる例が子宮頸がんワクチンの問題です。『10万個の子宮』はまさにこの問題を扱っており、本書を読むことで科学的な姿勢とはなんたるかを知ることができます。池江璃花子選手の復帰を妨げる可能性があるトンデモな人たちもぜひ読んでください。

AI vs. 教科書が読めない子どもたち 新井紀子

AIが人類を超えることは絶対にないことが、本書を読めば分かります。シンギュラリティはきません。でもね、基礎的な読解力がないとAIに立場を追われる可能性を否定できない。読解力がないのがいかに問題か、本書を読めばよく分かります。新入社員の読解力がないと嘆いている諸兄にもおすすめ。詳しくはAIに仕事が奪われる日は果たして来るのか?AIは夢の技術なのか?【書評】「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」を参照されたし。

このブログを書いてる人
早川 朋孝

業界15年ウェブ運用の専門家です。データ分析やシステム導入の提案などをガッツリやってます。まっとうな情報のインプットとアウトプットを地道に継続することに重きをおいていて、月140時間は本を読みます。ワインとクラシック音楽とネコをこよなく愛し、タバコとトンデモ・ニセ科学は嫌い。明治学院フランス文学科卒。

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