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「外注制作したShopifyで商品が売れない理由」EC専門のSEが約3500文字で教えます

早川朋孝 早川朋孝
EC専門のSE

EC専門のSEをしている早川朋孝です。

「Shopifyを外注制作してもらい、自社ECの運用を開始したけど全然商品が売れない。」

この記事では、こういう悩みをもった小売り業の社長やEC担当者の方に、業界でよくあるパターンを踏まえてその理由をお伝えします。

その前に、前提として実店舗や楽天などの他のモールでの販売実績がある商品を持っていることを挙げておきます。さすがに売れる商品がないのでは、どんなにEC運用を頑張っても売れませんので。それを踏まえてShopifyで商品が売れない理由を解説していきます。主な理由は3つです。

  1. 制作会社やデザイナーはデザインは上手だけどECで商品を売ったことはない
  2. 広告運用を外注丸投げで赤字垂れ流し
  3. 社内のパソコンに詳しい人に兼任させる

制作会社やデザイナーはデザインは上手だけどECで商品を売ったことはない

Lancersやココナラのようなクラウドソーシングのサイトで「Shopify」と検索すると、「ShopifyでECサイト構築します」といった内容の検索結果がたくさん出てきます。

Twitterで「Shopify」と検索すると、フリーランスとして稼げるようになりたいがために、ウェブデザインやShopifyの仕様を勉強中の人の投稿がたくさん出てきます。

Shopify構築は参入障壁が低く、またコロナ禍でEC構築需要が増えた影響もあり、ウェブデザインを勉強した人たちがこぞってshopify制作市場に参加し、あっという間に価格が下がりました。Lancersで制作コンペをかけるとあっという間に20〜30件の提案が入ってきます。

制作会社の提案もあれば、フリーランスの方の提案もあり、きっと大抵は無難に優れたデザインのECサイトを構築してくれます。中にはEC制作経験が100件とか1000件を超えるような制作会社などもあります。

しかし、彼らに依頼する際、依頼者には盲点があります。それはデザインを提案する大半の会社や人が実際にECで商品を売ったことがないということです。彼らはデザインは上手でも、依頼者の商品知識があるわけがないし、受注ソフトを操作したりしたことはないでしょう。

いくら制作会社が「売れるテンプレート」と言ったところで、そのデザインテンプレートで商品が売れる保証はありません。そもそもテンプレートだけで商品が売れるはずがありません。

デザイナーや制作会社の仕事はあくまで「デザイン」や「構築」であり、構築後の売上や運用にまで関与することはありません。依頼者がShopifyサイトができて運用を開始して、「全然売れないじゃないか」とか「運用が不便だ」制作会社に文句を言ったところで、彼らにはどうすることもできないのです。デザイナーからすれば「私に言われてもね、、、」となります。

しかしそれは当然でしょう。デザイナーの仕事ではないからです。こういった背景があり「デザインはいい感じだけど、商品が売れないShopifyサイト」が世の中にどんどん増えていきます。

そもそもECサイトに「売れるデザインテンプレート」などという都合のいいものは存在しません。デザインがいいだけで売れるなら、楽天やamazonなんてださいデザインですが、たくさん売れています。デザインなんて関係ないのです。

ちなみに実際にEC運用経験のあるデザイナーは業界では希少な存在で、大抵は現場に入って忙しく、コンペに提案する暇はないでしょう。

広告運用を外注丸投げで赤字垂れ流し

楽天やAmazonのようなモールと違い、Shopifyでは広告運用を自社でしないと集客できません。いくらデザインのいい自社ECサイトを構築しても、作っただけでは誰も閲覧しないのです。そこでインターネット広告の運用が必要だね、となりますが、この広告運用がまた難しいのです。

私もGoogle広告、Facebook広告などの運用をしていますが、使うたびに複雑で難しいと感じます。プログラムを生業にしてる私でも難しいのに、これがITリテラシーがそこまで高くない人なら、「もう手がつけらない」と諦めるのも納得できます。事実、ウェブ広告運用会社は世の中にたくさんあり、多くの会社が広告運用を外注しています。

広告運用の手数料は多くの場合20%と相場が決まっています(なぜかは分かりません)。100万円の広告料なら20万円が広告運用の手数料となります。50万円なら10万円です。

そう、たった10万円の売上です。会社の売上としてはその程度なのです。例えば地方の中小企業からすると、会社の規模によっては月50万円の広告費はかなりのコストになるでしょう。しかし高いコストをかけて広告費をはらっているという依頼側の感覚と、たった10万円の売上という広告代理店の感覚に開きがあるのは容易に想像がつきます。

自分では上客のつもりが、実はそうでなかったのです。10万円の売上なら、広告代理店は広告効果の検証にまで人手を割けません。時間をかけると利益が減るからです。

かくして決まりきった定型レポートと請求書が月末に発効されて、翌月もまた同じことが繰り返されるという状態が続きます。依頼主もこの状態では問題があることを認識しつつも、だからといって広告を止めると自社ECサイトへの流入が減るから止められないという膠着状態となります。広告代理店がやる気を出す価格がいくらかは分かりませんが、少なくとも30万くらいの売上は必要な気がします。

検証しないウェブ広告運用が成果を出すはずがありません。広告運用を外部に丸投げしても、ECでものは売れません。これは断言できます。

社内のパソコンに詳しい人に兼任させる

以上を整理しましょう。

  • EC運用をしたことのないデザイナーに依頼して、デザインはきれいだけど売れないShopifyサイトが構築される
  • 報酬が安いのでやる気が出ない広告代理店

これらがそろって売れないShopifyサイト運用が回ります。

そして、このshopify売れない無限地獄に追い打ちをかける条件があります。それは「兼任の社員に任せっきり」です。「社内にIT人材はいないし、パソコンに一番詳しい人にEC運用をやらせよう」とありがちな人事がなされた結果、売れない状態に拍車がかかります。

そもそも、パソコンに詳しいこととECを運用することはまったくの別の問題です。EC運用で成果を出すには、専任の担当者をおくとか、社長自ら積極的に関与することが死活的に重要です。実店舗をかまえるのと同じ覚悟と準備が要るのです。

いくらECが実店舗と比べると低予算で始められるとはいえ、作っただけで売れるはずがなく、そのままではずっと売れません。ECを事業として取り組んでいる会社だけが成果を出すことができます。

Shopifyで売れるようにするには

事業として取り組む覚悟ができたところで、実際にShopifyで商品を売るために会社としてやるべきことを以下に記します。詳細はまた改めて別の記事として用意します。

  • 実店舗を運営するのと同じようにEC運営に取り組む。
  • 専任の担当者は必須。EC店舗も実店舗と同じなのだから、人員を配置するのは当然。
  • 広告運用は外注してもいいけど、積極的に関与する。丸投げは厳禁。KPIや検証などに積極的に時間を割く。
  • 広告運用が最低限の成果を出すまで最低3ヶ月はかかる。その間は投資期間として割り切る。
  • デザインを無理に変える必要はない。広告運用とLPの見直しで試行錯誤を繰り返していけばいい。
  • 商品の説明は必ず自社でする。自社商品に詳しいのは自社内の人のはずだから。

こういったことに地道に取り組んだ先に、売れるECサイトの姿が少しずつ見えてくるのです。

EC運用で分からないこと、困ったことがあれば気軽にご相談ください。ネットショップ勤務経験があり、ウェブ運用も長くやってきました。現在はEC専門のSEとして業務アプリの開発、課題解決、ノウハウの提供、広告運用、データ分析、SEO対策、アクセス解析などを提供しています。

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このブログを書いてる人
早川 朋孝 EC専門のSE
IT業界歴20年のエンジニアです。ネットショップ勤務で苦労した経験から、EC・ネットショップ事業者に向けて、バックオフィス業務の自動化・効率化を提案するSEをしています。
プロフィール
API連携の相談にのります
趣味は読書、ピアノ、マリノスの応援など
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