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実録・悪質Web制作会社のホームページリニューアル舞台裏

早川朋孝 早川朋孝
ITコンサルタント

ホームページリニューアルをWeb制作会社に依頼したけど、ぜんぜん進まない、何度も納品が遅れる、といった事例が後を絶ちません。裏ではいったい何が起きているのでしょうか?

まず、突然ですがPCデポ問題をご存知でしょうか。

PCデポのある店舗が過剰なサポート契約を高齢者と結び、その契約解除に20万を請求されたという問題です。当事者の息子の方がTwitterでつぶやいたところ一気に広まり、PCデポに批判が殺到したそうです。この結果、株価が急落したとか。顧客軽視の怖い結果とSNSの力をまざまざと見せつけてくれる事例です。PCデポの損害は顧客が減り、株価が落ち、批判の電話対応の人件費などかなりの額になるのではないでしょうか。

PCデポに欠けていたのは顧客視点です。目先の数字を重視した結果、会社や業界の評判が落ち、結果的にさらに苦しくなるという視点が欠如しています。顧客視点の欠如が、Web業界では以下のような事例として出てきます。

目次

  • 一年たってもホームページが納品されなかったKさんの事例
  • Web制作会社で一体何が起きていのたか
  • Kさんは最初どうするべきだったか

一年たってもホームページが納品されない事例

住宅向けの塗装サービス業を営んでいるKさん。

Kさんは自身のホームページが古くなったと感じており、そろそろリニューアルしたいと思ってました。そんな時、タイミングよくWeb制作会社からリニューアルの営業電話がありました。Kさんは電話口で感じのいい営業担当者に会うことにしました。Kさん自身がちょうど悩んでいた内容を解決してくれるような提案を次々にしてくれる営業担当者、Kさんは契約をすることにしました。

さて、ここでビックリすることが起きました。契約した直後に信頼していた営業担当者が変わってしまったのです。Kさんがその会社に理由を聞くと、契約後に実際に案件を進めるのはWebディレクターなので、営業担当は基本的に関わらないとのことでした。そんなものかと思ったKさん、若干の違和感を感じながらも深く追求はしませんでした。

Kさんは「ホームページのデザイン案を固めるので進捗があれば連絡します」とWebディレクターに言われので、しばらく待つことになりました。2ヶ月が経過しましたがWebディレクターからは何の連絡もありません。さすがに遅いと感じたKさんは制作会社に問い合わせの連絡をしました。そしたらWebディレクターは「ホームページのデザイン作成に時間がかかっているのでしばらく待って欲しい」とのこと。Kさんはもう少し待つことにしました。

さらに1ヶ月が経過しました。だいぶストレスのたまったKさんは、再度問い合わせましたが、相変わらずデザインが固まらないとのこと。現段階のデザイン案でいいので一度見せてくれと要求しますが、まだできていないの一点張り。憤激したKさんは、営業担当者に連絡しました。そしたら、営業担当者は退職したと言われました。あれだけ熱心で感じの良かった営業担当者が、客になんの連絡もなくそんなにあっさり辞めたのか、Kさんは怒りを通り越してがっかりしてしまいました。

そうこうしているうちにKさん自身が忙しくなり、しばらくホームページリニューアルの件を忘れていました。契約から1年が経過し、久々にWeb制作会社にKさんは連絡しました。そしたら、衝撃的な出来事が起きました。Web制作会社の人間から「あなたは誰ですか」と言われてしまったのです。そして、担当していたWebディレクターを指名するも「退職した」と言われました。

なぜ契約した客を誰も知らないのだ、契約した客の情報を共有していないのか!

なぜそんなに皆すぐ辞めてしまうのだ。

頭にきたKさんは弁護士をたててWeb制作会社に連絡しました。すったもんだのすえ、交渉の結果、返金するか、ホームページをちゃんと納品するかという話になりました。Kさんは迷わず解約しました。余計な弁護士費用と時間のかかったKさんは固く心に誓いました。「二度とこんなWeb制作会社には発注しないぞ」と。

Web制作会社で何が起きていのたか

なぜ、こんな自体になってしまったのでしょうか。その理由を以下に順に説明します。

営業してきたWeb制作会社の実体

このWeb制作会社の実体は制作会社ではなく営業代理店でした。自社でオリジナルな商材があるわけではなく、デザイナーがいるわけでもなく、他社の商材や営業力のない別の会社の代わりに営業しているだけ。もちろん世の中にまともな営業会社もありますが、悪質な営業会社はお客さんに何の価値も提供することなく高い手数料をとります。

よくありがち悪質営業会社は、気合重視の社長のもとで何の営業戦略もなく社員が電話しまくるパターン。過酷なノルマを課せられた営業担当者は電話機に手をくくりつけてテレアポをしまくり、宝くじをあてるようなつもりでテレアポに挑みます。彼らの念頭にあるのは相手がテレアポのスクリプトにひっかかるかどうかだけで、相手にいい提案をしようなどとは露ほども考えていません。そもそもスキルがないからいい提案ができない。

営業担当者は当然、最初は相手に感じよくします。しかし契約してしまえば、営業担当はもう相手に用がありません。再び過激なノルマに向かわないといけないからです。営業担当者が意地悪なわけではなく、会社の体質がそうさせるのです。こんな会社ですから人の入れ替わりは激しいのです。営業担当者はお客さんへの感謝も連絡なくすぐ辞めてしまいます。Kさんの営業担当が辞めたのはこういう背景があったのです。

なぜデザインは放置されたのか

この話で、Webディレクターという登場人物がいましたね。彼はお客さんと下請けやパートナーのWeb制作会社の間をとりもって、いろいろWeb制作の進行調整をする必要があります。

しかしWebディレクターはあまりに人数が少なく忙しいため、本当にお客さんへの連絡を忘れてしまうのです。上述の通り彼に悪気はないのですが、会社の体質で結果的にそうなってしまう。営業代理店はずさんなため、案件の情報を社員間で共有していません。だから担当者が辞めたら、本当に契約が忘れられてしまうのです。

つまり、完全放置

ずさんさの根源にあるもの

営業代理店は詐欺をするつもりはないのですが、とにかく異常な体質のためいつも完全放置になってしまいます。このようにずさんな営業会社はいくらでもあるのです。

Web制作以外に少し視野を広げると、それが例え大手企業であっても似たような事例があります。東芝とか、三菱自動車などが起こした不祥事の根源にあるものと、この記事に書いた放置された事例の根源にあるものは、私には同じに思えてなりません。最近では冒頭で紹介したPCデポの事例が有名ですね。外部の人間からするとちょっと考えられないことですが、そんなことが企業という組織内部では平気で起こるのです。

人口減のモノやサービス売れない時代に、どの会社もどの業界も必死なのです。ただ、無理をしても結果的に自分の首を締めることになるし、業界の評判を落とすだけなのに彼らはそれに気づかないのです。よく繁華街で見かける飲食店の悪質なキャッチも似たようなものです。

Kさんはどうするべきだったか

さて話をKさんに戻します。Kさんの件から得られる教訓は、テレアポに安易に反応すべきではないということです。もっとも、テレアポをしてくる会社でもちゃんとした会社はあるので、一概に全ての営業電話が悪いというわけではないのですが。。。判断はけっこう難しいところですが、どんな会社なのかちゃんと調べてから契約するべきでした。

Kさんのような目に遭いたくないなら、面倒がらずに調査する点があります。意識するべき点は、例えば以下のようなことです。

  • 金を払うからと丸投げしない
  • どんな営業担当か確認する
  • 契約を検討する際は実績をきく
  • サービスの弱点をきく

金を払うからと丸投げしない

自分は客で相手に金を払うのだから、ぜんぶやってもらおうという姿勢ではぼられます。ホームページリニューアルなら初歩的な本の一冊でも読んで、基礎知識をつけてからのほうが、営業相手とより深い話ができます。

どんな営業担当か確認する

本を一冊でも読んだなら、少しは知識がついてるはずですね。その知識に基いて、営業担当者にいろいろ突っ込んだ質問をしてみましょう。もし営業担当がすんなり答えられないなら、そいつは雇われたばかりの新米の可能性が高いです。ちゃんと詳しい上司が出てくればいいですが、出てきた上司も新米と同じように詳しくなければ、かなり怪しい会社と言えます。

契約を検討する際はどんな会社なのか実績をきく

例えばWeb制作会社なら、過去の実績が必ずあるはず。その実績をいくつか教えてもらい閲覧したほうがいい。さらに、実績として教えてもらった会社に、思い切って制作会社がどんな対応だったかを直接問い合わせてみましょう。これでWeb制作会社がどんな会社なのかある程度分かります。他にも、どの分野に強いか、どんな実績があるのか、代理店なのか開発元なのかなど、聞くべきことはたくさんあります。色々な質問をすると実体が浮かび上がってきます。その実体がまともそうかどうかしっかり判断しましょう。

サービスの弱点をきく

どんな優れた製品やサービスであっても、その競合と比較した場合になんらかの弱点は必ずあります。完全無欠というのはちょっと考えにくい。営業担当者が弱点を踏まえた上で、トータルでどんな価値を提案してくるか、じっくり聞きましょう。その時に弱点をごまかしたりちゃらさを感じたら、やっぱりかなり怪しい会社です。

最後に

というわけで、安易にテレアポを鵜呑みにしないように注意しましょう。そうしないと、Kさんのように憤激して血圧が上がってしまいますから。丸投げは厳禁です!最後に付録として、ずさんな営業会社かそうでないか比較表を載せておきます。

営業担当者 上司 会社の実績
ずさんな営業会社 同じようなことを表現を少し変えて何度も言ってくる。信用ならない感じがする。ちゃらい。 質問にちゃんと答えない。部下と同じレベルに感じる 曖昧にしか答えない
ちゃんとした営業会社 質問に的確に答える。自信がありそう。一貫性がある。 営業担当者がしっかりしているので上司が出てこなくていい 細大漏らさずきっちり答える
本記事に関して質問があればツイートしてください。
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このブログを書いてる人
早川 朋孝 EC専門のSE
IT業界歴20年のエンジニアです。ネットショップ勤務で苦労した経験から、EC・ネットショップ事業者に向けて、バックオフィス業務の自動化・効率化を提案するSEをしています。
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