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池江璃花子選手の復帰を妨げる可能性があるトンデモな人たち

雑談

白血病の公表をした池江璃花子選手。あまりに不運だし、日本の損失。彼女の回復と完全復帰を心の底から願っています。でね、こういう時に、ここぞとばかりに登場するのがトンデモな人たちです。トンデモは意味不明な言説で世を惑わし、無責任な言説で自身の商売につなげようとします。しかし、以下のツイートのようにトンデモに対して怒り心頭な人はたくさんいます。私も反トンデモです。

無自覚なトンデモは始末が悪い

彼らトンデモには悪意がある場合とない場合があって、悪意がない場合は本当に始末が悪い。だって自分でトンデモと認識していないから。そんな無自覚トンデモに限って、意外と発言力があることがあります。情緒的、感情的な発言を繰り返し、マスコミなどがそれに反応し、世の中に影響を与えてしまう。それも悪い影響です。そして早速、トンデモを一匹見つけました。

がんを告知された、白血病だったなど弱っている人にすりよるトンデモがたくさんいるのです。もちろんまったく知らない人がワケのわからない治療法を主張して近寄ってきても普通は退けます。でも、精神的に弱っている状態ならどうでしょうか。本人だけでなく家族も精神的に参っている。たまたま家族の一人が少しスピリチュアルな傾向があって、トンデモがその人に何度も怪しい治療方法を案内し影響を与えてしまったら、その悪影響はやがて本人に及ぶかもしれない。これがトンデモの怖さです。

10万個の子宮:あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか

10万個の子宮

こういうトンデモな状況を村中璃子氏の『10万個の子宮』という書籍がよく描いています。日本のトンデモがどういう人たちで、それによってどういう害悪があるのか。本の内容を踏まえて簡単に説明します。

ただでさえ少子化の日本ですが、日本では毎年、子宮頸がんによって3000の命と1万の子宮が失われています。子宮頸がんワクチンを接種すればこのうちの多くは助かるのですが、2019年2月現在、子宮頸がんワクチンの接種率は依然として低いままです。そして多くの女性が命を落としている。ワクチンを接種すればいいだけなのにです。で、問題はなぜ子宮頸がんワクチンの接種率は低いのか?です。

それは子宮頸がんワクチンを接種した女児が、はげしい痙攣を見せるショッキングな映像がメディアによって繰り返し放映されたからです。あの報道によって子宮頸がんワクチンは副作用があるからやめておけ、という風潮がすっかり定着してしまった。確かにあの痙攣する女子の映像はショックでした。今でもyoutubeで「子宮頸がんワクチン 痙攣」とかで検索すればいくらでも出てきます。でもね、その痙攣は本当に子宮頸がんワクチンの副作用だったのか?というのが『10万個の子宮』のテーゼです。「痙攣はワクチンの副作用ではない」という主張が科学的なエビデンスに基づいて淡々と展開されます。

なぜ著者がそういう主張をするかというと、一言で言えば「トンデモ退治」です。著者はワクチンで痙攣するような繊細な女子はいつの時代もいる。アルプスの少女ハイジに出てくるクララみたいなもんだ」と痛快に言います。そして、限りなく一部の女子が痙攣したという一事でもって、ワクチン接種が敬遠され本来なら救えるはずの命が失われていると主張します。トンデモは害悪でしかないのが分かるでしょう。ここにトンデモがどんな人たちなのか、『10万個の子宮』から引用します。

一方、反トランプの左翼系反ワクチン論者は、大きな製薬企業に象徴される資本主義、政府や医師・科学者といった専門家に対する反知性主義的な立場から、標準医療に疑念を抱き、代替医療やオーガニック食品を好む傾向にある人たちである。政府や専門家の背後には製薬会社との利益相反がある、との陰謀論を唱えるのもこのグループだ。日本の反ワクチン論者の多くも、このグループに入る。多くの場合、反安倍政権、反原発、反安保などとセットになっているのが特徴だ。

このことについて、以前、放射能と子宮頸がんワクチンについて筆者と行った対談の中で、福島県出身の社会学者・開沼博氏はこう語っている。

「それはこの言説を追っている人の中では完全に常識ですね。グローバルな社会運動の歴史の転換点は70年代にある。それまでマルクス主義ベースの政治の問題を扱った運動が衰退する中で、公害やオイルショック、ベトナム戦争などを受けてエコロジーなど生活の問題が大テーマになっていく。赤から緑への転換とも言えますが、緑のエコ運動の中には、反資本主義、反科学、反人工物などがある。思考停止してそのセット志向に従っておけば、政治的に考えた感じになれて周りと共感しあって安心できる。」(Wedge)2016年5月号「放射能・ワクチンへの不安カルト化からママを救うには」)

『10万個の子宮』p212

トンデモの正体

もう少し『10万個の子宮』から引用してみます。ここまで読むとトンデモの正体が見えてきます。

繰り返しになるが、子宮頸がんワクチン接種後の少女の中には「心因性=情動に装飾された身体症状」という診断を受け入れることができず、ワクチンのせいだと不安を募らせて症状を悪化させるケースも多い。そんな少女たちは、大多数の「まっとうな医師」よりも、薬害だと断じ、一緒に戦ってくれる医師や弁護士、自称ジャーナリストなどのカギカッコ付き支援者」が自分を救ってくれるものと信じる結果につながる。一方、ワクチン不安を抱えた少女は、「薬害を見つけた」と主張することで利益を得る「支援者」にとって、欠くことのできない存在となっている。

『10万個の子宮』p225

そう、トンデモは自分の商売につなげたいのです。<一緒に戦ってくれる医師や弁護士、自称ジャーナリス>と上記引用にあるけど、医者だろうと弁護士だろうとロクでなし、たわけ者みたいなのはいくらでもいます。まっとうな方法で稼げない医者や弁護士が仮に金づるを見つけたら簡単には手放そうとしないでしょ。自分と一部の信者しかいない狭い世界を作って、その中を守ろうとします。彼らがその世界の外に向かってなにかを発信するときは、それはポジショントークでしかない。でもそれが世の中の公益に害悪をもたらしている。トンデモはまじくそです。

さらにたちの悪いことに、トンデモの言説はSNSが普及した今日、どういうわけかやたら目立つ。言説が特徴的なので、良くも悪くも目立ってしまう。トンデモは錬金術士みたいな奴らなのに、一定の割合でそれを信じてしまう人がいるのです。

ここまでは子宮頸がんを軸にしてトンデモについて説明しましたが、似たようなことが発達障害にも言えます。それについては【書評】「発達障害」と言いたがる人たち 著者:香山リカを読んでください。いろいろな自称○○の専門家がいて、今日もトンデモな活動をせっせとしているのです。繰り返しますが、トンデモはくそです。世の中の公益を害しているからです。

標準治療に従いましょう

池江璃花子選手がトンデモの毒牙にかからず、標準治療をする医者にかかっていることを願います。そしていつか自分自身が不運にもがんや難病などに侵されたとき、そういう時は正常な判断は難しいだろうけど、根拠のないスピリチュアル療法ではなく標準治療をする医者に診てもらいましょう。日頃からSNSでそういう人をフォローしておけば、いざという時に役に立つかもしれません。

科学的なエビデンスに基づいて情報を発信する専門家をフォローするこそ、SNSの正しい使い方だよ。



このブログを書いてる人
早川 朋孝

業界15年ウェブ運用が専門のITエンジニアです。サーバー保守やアクセス解析などフロントからバックエンドまで何でも対応します。データと科学的エビデンスを重視し、月140時間は読書します。ウェブ業界の裏側や読書で学んだこと、社会的なことなどをブログ記事にします。ネコ好きなタバコ嫌いで、明治学院フランス文学科卒という文系出身のエンジニアです。マリノスファン。

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