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IPのアクセス制御を設定しただけで喜ばれた。苦労しているエンジニアは提案力つければぐっと幸せになれます

2019年02月07日 マーケティング

私はエンジニアではないのですが、少しだけLinuxの操作ができる関係で、技術的なことをいろいろな人から相談されます。それでね、先日ちょっとびっくりすることがありました。

取引をしているある会社が使っているCMSが、ドメインの後ろに/adminをつけるだけで管理画面が表示されるというセキュリティ面に問題があるものでした。「これじゃセキュリティ面でよくないから、ベーシック認証かIP制限でもやったほうがいいですよ」と提案したところ、2つ返事で「ぜひお願いします」とのことでした。その会社はVPNを使っていたので当然固定IPを持っています。だからベーシック認証より強固なIP制限を設定しました。

やっったことはLinuxにログインしてnginxの設定ファイルをほんの5行くらいの記述をしただけ。この設定をしたら、すごく感謝された。ものすごく感謝された。びっくりするくらい感謝されました。「え、まじで?」ていうくらい感謝されたの。その会社とは引き続きいい関係を維持できそうです。

IPアドレスによるアクセス制限なんて、知ってる人からすればたった数行を設定ファイルに追記するだけです。文字通り秒で終わりますよ。そんな簡単な作業なのに、誰もその会社に提案してこなかった。そんなセキュリティの穴があることをそこの社員も知らなかった。セキュリティの穴が見過ごされたまま長い時間が経過していたのです。VPNを組むような規模の会社で、その辺のレンタルサーバーではなくルート権限のサーバーも持ってる会社なのにです。

どういう事情でセキュリティが緩かったのかは分かりません。昔は技術に詳しい人がいたけどたまたまやめたのかもしれないし、忙しくて放置されたのかもしれない。でも大事なのは、そういう問題に気づいて提案することです。そして実際に設定してあげること。あなたにとってどんなに簡単な作業でも、相手がまったく知らない分野のことならそれは価値があることなのです。依頼されてから動くより、自分で課題や問題を見つけて提案するほうが遥かに価値があります。仮にあなたがすでに技術力のあるエンジニアだとして、社内でも社外に対してでもいいけど、自分から課題解決を提案をしていけばそれは立派な提案営業です。エンジニアが自分で提案営業できればビジネススキルとしては最強です。

こんなにさらっと書くと、「そんなこと言ったって、簡単に提案なんてできないよ。IPアドレス制限なんて簡単なのと一緒にしないでよ」という反論が聞こえてきそうです。果たして、本当にそうだろうか?

どうやって提案力を身につけるか

提案力というのはパワポをつかって人までかっこよくプレゼンを決めることではありません。そんな安易なものではないのです。

提案力のない人に共通しているのは、ひたすら受け身であるということ。そういう人がなにか理不尽な依頼を受けたとしましょう。例えば終業間際に重い調査を依頼されるとか、障害対応とかです。提案力のない人は言われるがままに仕事を続け、問題が解決されるまで際限のない残業をすることになります。一方で提案力のある人は、何をどこまで対応すればいいかを明確にします。「相手の要望は○○だろうから、今日の対応は〜まででいいですよね」と自分から打診します。そしてそれがクリアできた時点で帰ることができる。

こういう姿勢は多くの場合好まれますし、仮に好まれない場合は相手がおかしい。そういう無理な要求をしてく客や会社はすっぱり付き合いを切るべきです。そんな簡単に付き合いを切ったら仕事がなくなるという人は実力不足なので、勉強してください。なお、勘違いしてほしくないのですが、この提案力は一方的に我を通すのとは違います。「定時だからわたし帰ります!」なんて一人でヒステリックに叫んでも、「あいつなんなの」と浮くだけなので注意しましょう。

ここで大事なのは、相手の要望が何であるかをしっかり汲み取ることですが、これには経験と想像力が欠かせません。ヒアリング能力は一朝一夕で身につくものではないので、日頃から意識して磨くしかありません。あなたの専門分野での経験を積めば、「ああ、あれが原因だな」という感じで相手から一言相談されただけでその問題の根底にあるものが分かるようになります。腕利きのコンサルはたいていそういうふうに仕事をしている。だからすごく若いコンサルというのはそれだけで怪しいです。そんな経験あるはずがないから。

まず問題を理解すること

世の中には問題解決のビジネス本みたいなのがたくさん出てます。丸の内の丸善に行ってビジネス書籍のコーナーを覗いてみてください。日経BPの本がたくさん並んでます。しかし、読書家の私が断言します。ロジカルシンキングとか問題解決の本を100冊読んでも、そういう能力は身につかないです。そういう能力の訓練に役立つのは数学的思考です。したがって数学的な思考を訓練する本がおすすめです。

とくに文系私大で数学を避けてきたビジネスマンには数学的思考能力が欠如しています。エンジニアでも数学を避けてきた人がいるかもしれませんが、そういう人は要注意です。結局地道な努力なくして能力は磨かれません。自分のスキルに問題があると認識したら、そこを埋める努力をするしかないのです。では、そのためにどういう本を読めばいいのか。提案力、問題解決力、論理思考を磨く本を教えます。

ビジネスに効く読書

新体系・高校数学の教科書

芳沢 光雄さんの大人むきの『新体系・高校数学の教科書』です。読み応えがあり、作家の佐藤優さんはこの本を1年半くらいかけて読んだと、どこかで書いてありました。けっこう難しいのでついていけない場合は『新体系・中学数学の教科書』に戻るといいです。また、高橋一雄さんの『もう一度高校数学』もおすすめです。こちらは計算重視で、『新体系・高校数学の教科書』では当然すぎて出てこない背景を補えます。この本を消化するには忍耐を要しますが、諦めないで食らいついて読了すれば、それまで見えなかったものが見えるようになります。こんなにコスパの高い本もなかなかないです。

イシューからはじめよ

こちらも評判の高い本です。これはすぐ読める本ですが、だからといって理解できるかは別の話。抽象度が高く考えながら読むべき本です。あなたの職場に、いつも定時で帰るけどしっかり成果を出している人とか、異次元の営業力で他の人より桁が違う数字を引っ張ってくる人がいれば、そういう人は『イシューからはじめよ』に書かれていることができている人かもしれない。じっくり読むべき一冊。

ニコマコス倫理学

コンサル会社出身のロジカルシンキング本はたくさんありますが、上記の通りそんなの読んでも大して勉強にならないことが多いです。あれこれ読むより古典とじっくり向き合うほうがずっと知的体力を養えます。この本は古代ギリシャの哲学者アリストテレスが「幸せとはなにか?」という難題に対して、あらゆる確度から検証し突き詰めていくというロジカルシンキングの極限のような本です。2000年以上前にこんな頭のいい人がいたのかと、びっくりしますることが請け合いです。ちなみに『ニコマコス倫理学』は読書慣れしていない人を寄せつけません。

ローマ政治家伝I カエサル

最後は少し気分を変えて偉大な政治家の伝記を紹介します。これも読み応えがあり、値も張るので気軽にアプローチできる本ではないですし、高校の歴史でローマ史の基礎知識を事前に仕入れておく必要があります。その準備をした上で本書を読めば、大きな物事を成し遂げる人のメンタルを感じ取ることができます。問題があれば自分からその渦中に身を投じ、自分の都合のいいように状況を変えてしまう。この能力とメンタルの0.1%でも身につければ、ビジネスの現場で役に立つ立派な提案力、問題解決能力となります。メンタル鍛えるのにちゃらい自己啓発本とか読んでる場合じゃないよ。

いずれの本も読み応えのある本ばかりで、読書する習慣のない人には厳しい本ばかりです。もし少し読んでみてまったく歯が立たないようなら、知的な基礎体力が欠如している証拠です。じっくり基礎的な勉強をして知力を養いましょう。その力は今後生きていくのに必ず役立ちます。ビジネスの現場では想像を絶するくらいに安易に考える人とたくさん出会いますが、知的体力を磨いておけばそういう人の対処が楽にできるようになります。頑張って提案力を磨いて、幸せなエンジニアになってください。

このブログを書いてる人
早川 朋孝

業界15年ウェブ運用の専門家です。データ分析やシステム導入の提案などをガッツリやってます。まっとうな情報のインプットとアウトプットを地道に継続することに重きをおいていて、月140時間は本を読みます。ワインとクラシック音楽とネコをこよなく愛し、タバコとトンデモ・ニセ科学は嫌い。明治学院フランス文学科卒。

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