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【書評】チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷

早川朋孝 早川朋孝
ITコンサルタント

チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷

23歳、領土も兵士もない状態から、たった4年で自分の王国を創るという寸前にまでいった人物がいた。彼の名はチェーザレ・ボルジア。1475年生まれのこの男は、父親が法王アレッサンドロ6世であることを最大限に利用し、ロマーニャからラツィオまでイタリア半島のほぼ3分の1を自分のものにした。しかし、チェーザレはあと一歩というところで、運命の女神に手のひらをかえされた。

マキャヴェッリは「たしかにこれまでに、ある人物がでて、神がイタリアの贖罪をお命じになられたかと思える、一条の光が射したことがあった。だが、残念ながら、彼は活動の最盛期に、運命の手から見放されてしまった。」(池田廉訳 中公文庫)と君主論でチェーザレを評した。日本ではほとんど知られていないが、この人物に塩野七生が光を当て素晴らしい著作となった。それが「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」。日本語で読める数少ないチェーザレ・ボルジアに関する書籍だ。

目的のために手段を選ばず

チェーザレ・ボルジアは自分の野心を遂げるためには何でも利用する男だった。あえて戦国大名で似ている人物を探すならば、織田信長が近いかもしれない。自分の目的の邪魔になる人物を次々と排除し、敵が多く、迅速果断に行動し、家臣に恵まれ、かなりいいところまでいったけど、最後に運に見放された。

毒がたっぷりのこの人物一人を塩野七生は渾身の筆で描ききっている。歴史書ではないし、小説でもないし、エッセイでもないし、でも同時に歴史書みたいな、小説みたいな、エッセイみたいにも感じる不思議な塩野七生の文体が、この「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」という処女作で十分に表れている。日本でマイナーな人物をここまで面白く読ませる意欲が溢れ、読み始めたら一気に最後まで読んでしまうだろう。読む時はイタリアの地図を頭に入れてから読むことをお勧めする。

実用的な読み方をするならば

チェーザレ・ボルジアのような人物は、ITベンチャーとか自営業の社長に多いかもしれない。他者との軋轢を一切気にしないで自分の道を突き進む。周りを巻き込んで、敵も味方も多い。たいてい評判は悪いがそんなことはまったく気にしない。もしあなたの周りにエネルギーがすごくあって、かつかつ歩く野心家っぽい人がいたら、その人はチェーザレのようなタイプかもしれない。

もしそういう人に出会ったらどう対応するか、本書を読んでおけば事前に考えておくことができるだろう。ちなみにレオナルド・ダヴィンチは自身の構想を実現するために、チェーザレと仕事をした時期があった。毒のあるエネルギー溢れる人物は、いろいろな人を惹きつけるのだ。

※今は文庫で出てます

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このブログを書いてる人
早川 朋孝 EC専門のSE
IT業界歴20年のエンジニアです。ネットショップ勤務で苦労した経験から、EC・ネットショップ事業者に向けて、バックオフィス業務の自動化・効率化を提案するSEをしています。
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趣味は読書、ピアノ、マリノスの応援など
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