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【書評】日米の衝突 ペリーから真珠湾、そして戦後 ウォルター ラフィーバー

書評・読書ノート

毎年この時期になると戦争を太平洋戦争を振り返るテレビ番組や新聞の紙面が自然と増えますね。8/12の読売新聞には漫画家のちばてつやさんの壮絶な体験が掲載されていました。ちばてつやさんが6歳のとき旧満州から引き揚げる際の壮絶な体験です。内陸の奉天から引き揚げ船のある港まで300kmに及ぶ距離を徒歩で踏破し、道中で見たのは、倒れて動かない人や死んだ子供を背負い歩き続けている親、身ぐるみはがされた死体など今の恵まれた日本からすると想像もつかないようなことでした。私の父もちばてつやさんと1年違いの満州出身で、敗戦の前に日本に戻り大した苦労をせずに済んだと最近知りました。少し運命が違えば、どうなっていたかわかりません。

こういった体験記を読み、そして「終戦」という美化された表現に集中的に触れると、日本が戦争の被害者のように思ってしまいます。しかし現実はそんなに単純ではないのです。一言で「太平洋戦争」とか「先の大戦」と表現される戦争は、現実にはいくつかに分けて考える必要があります。対中国においては侵略戦争だし、対ロシアにおいては日本は一方的に同盟を破棄されいまだに北方領土を占拠されている被害者だし、対米においては太平洋の覇権をかけて争った利権争いの戦争です。これらを一つにまとめて「太平洋戦争」と片付けることに無理があって、実際はもっと複雑なのですよ。

今回紹介するのは『日米の衝突 – ぺリーから真珠湾、そして戦後』という本で、原題は『The Clash – a history of U.S. – Japan relations』。著者はアメリカ人のウォルター・ラフィーバー。本書が描くのは太平洋戦争だけではなく、ペリーの来訪から始まりクリントン大統領のジャパン・パッシングまでの日米の通史を、アメリカ人の視点から描いたもの。このアメリカ人の視点というのがみそで、日頃日本人による歴史観にばかり触れている日本人には大きな刺激になるに違いない。

本書に通奏低音のように一貫しているのは、自由の国アメリカから見た日本という異質な資本主義の国に対する競争相手として意識です。なるほどアメリカ人は日本をこう見ているのかというのがよく分かり、例えば外資系の東京オフィスで働いている日本人からすると、同僚のアメリカ人の見方が変わるかもしれない。

例えば、真珠湾攻撃の直後の日本人に対するアメリカ人の感覚は以下によく表れているが、この一節はアメリカにおける日本人の資産凍結が真珠湾攻撃の一端であったことをを完全に忘れている。冒頭の「軍事的な危機」とは真珠湾攻撃を指します。

軍事的な危機によって一世紀にわたる人種差別も激化した。その結末は闘争の後に著名な米国の従軍記者アニー・パイルによって後に要約された。「欧州におけるわれわれの敵は、いかに恐ろしく生かしておくことのできない者たちであったにしても、まだ人間だった。しかしここ[太平洋]では、何か人々がゴキブリや鼠について感じるように、日本人を人間以下のぞっとするような生き物のように見ているということを、私はまもなく理解した」。より幅広い意味では、米国務省の担当官たちは「民主的な制度は日本の哲学と相容れないものである」と確信していた。そうした信念と軍事的な危機によってハワイ以西における米国の行動が形成されただけでなく、カリフォルニア州に住む8万人の日系米国市民の生活も劇的に変化することになった。

一方、上で紹介した対中国においては侵略戦争だったというのは、具体的には日本が対中国にといて侵略戦争だったという認識は以下に紹介する幣原の言動から分かる。

限りある島国(において)、われわれは年間70万人から80万人の人口増加を経験している。したがって工業化を進める以外にわれわれに選択の余地はない。このことから言えるのは海外市場を確保することが不可欠であり、これは経済外交を採用することによってしか成し得ない。もし領土拡張によってわれわれの経済問題を解決しようとすれば、国際的な協力を損なうだけであろう。日本は中国に最も近く、輸送経費の面で利があり、また賃金の面で、かの国は最もすばらしい競争力を持っている。したがって日本にとって優先すべきは中国の大きな市場を維持することでなくてはならない。

p202

本文は500ページに及び5500円という大部といっていい書籍で、一方的なアメリカ人の書き方腹が立つかもしれませんが、日本人による単一な戦争観や歴史観に辟易している人には一読の価値はあります。奇しくもつい先日、沖縄の翁長知事が急逝しまし残念でなりません。彼が戦っていたヤマトの政府の背後には、本書で描かれているような日本とアメリカの大きな歴史の流れがあるのです。

安倍総理大臣がどんなにトランプ大統領と仲良くしていようとも、現実にはアメリカが日本を親友とみなすことはない。アメリカからみたら、日本は昔も今もこれからも異質な資本主義の国なのです。そのことがよく分かる一節を最後に紹介します。

1852年、ミラード・フィルモア大統領は天皇への特別な書簡を送るようマシュー・C・ペリー提督に命じた。この書簡には「陛下の国における古くからの法によって中国とオランダを除く外国との貿易が許されていない、ということをわれわれは承知しています」と述べられていたにもかかわらず、フィルモアは日本と米国との間の「自由貿易」を認めるよう天皇に求めた。1989年、国務長官ジェームス・ベイカー三世の回想によれば、「日本を内向きの商業主義的経済大国から米国との強い絆で結ばれた外交的な経済及び政治大国に」転換するという「目的」を持って、ブッシュ政権が発足した。もしこの二つの文書だけが日米関係の記録であったとすれば、136年の間、米国と日本との関係はほとんど変わらなかったと結論づけることになるだろう。

日米の衝突 p511

関連書籍

佐藤優氏の『日本国家の真髄』は絶対に外せない。大川周明の『国体の本義』を丁寧に読み解く形で日本のアメリカと英国に対する太平洋戦争の正当性を訴えている。右翼も左翼も読むべき本。

このブログを書いてる人
早川 朋孝

業界15年ウェブ運用が専門のITエンジニアです。サーバー保守やアクセス解析などフロントからバックエンドまで何でも対応します。データと科学的エビデンスを重視し、月140時間は読書します。ウェブ業界の裏側や読書で学んだこと、社会的なことなどをブログ記事にします。ネコ好きなタバコ嫌いで、明治学院フランス文学科卒という文系出身のエンジニアです。マリノスファン。

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