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【書評】GAFA 四騎士が創り変えた世界 スコット・ギャロウェイ

早川朋孝 早川朋孝
ITコンサルタント

IT好きな人が話題の企業を取り上げて褒め称える本かと思っていたがそうではなく、むしろ自己啓発本でした。著者が四騎士と呼ぶGoogle、Apple、facebook、amazonという今もてはやされ好感度も高い4つの企業がどうやって利益を得ているか、競合他社や消費者にどういう影響を与えたか、これらの企業の登場で世界はどう変わったかを説明していきます。そして、四騎士の目的はどういう目的で、それをどうやって実現したかを四騎士ごとに詳細に説明します。

例えば、appleはスマホのシェアはそこまで高くないがスマホ販売における利益をほぼ独占し、それを持つことは異性へのアピールとなるようなブランドと化したと著者は言います。Amazonは顧客の狩猟・採集の本能に訴える仕組みを整備し、ゼロクリックオーダーや物流を支配し1兆ドル企業を目指しています。また、一般にあまり知られていませんが、AmazonのAWSは通販よりはるかに高い利益を得ています。朝日新聞社の記事を引用しましょう。

アマゾンが2月2日に発表した16年12月期決算は、営業利益が41億8600万ドル(約4600億円)で過去最高。その74%にあたる31億800万ドル(約3400億円)をAWSが稼いだ。通販(10億7800万ドル)の3倍にあたり、今やAWSが主力事業だ。

2017/3/28 朝日新聞デジタル

四騎士のいずれもが人の本能を刺激するビジネスモデルで大きな利益を得ています。起業当初は他社のアイデアを盗むなどやんちゃなベンチャー企業でしたが、いまやGoogleは時価総額5320億ドルで、Google以外のディズニーやワーナーなどの大手メディア企業の時価総額の合計5270億ドルより高いのです。これほどの規模になると市場の独占状態になり利用者は他の選択肢がありません。気が付いたら私たちの生活、特に若い人はGAFAにどっぷりの日々になっていたと言えるでしょう。

若者へのメッセージ

本書の著者のメッセージは明白で、若者に向けて「勉強しなさい」と言います。「大学に行くべし」とか、「転職を繰り返すな」とか、「まぁ、そうだよね」っていう当たり前のことが書かれていて、日頃から勉強している大人のあなたなら本書を読む必要はないけど、スマホ中毒の若い人は読んだほうがいいかもしれない。本書の冒頭で著者は以下のように意思表示をしています。

私は講座の最初と最後に必ず、学生たちにこのコースの目的を説明する。目的は学生たちに武器を与え、自分と家族の経済的安定を手に入れられるようにすることだ。

私がこの本を書いたのも同じ理由からだ。いまは億万長者になるのはかつてないほど容易だが、百万長者になるのはかつてないほど難しい時代だ。そのような経済状況の中で読者のみなさんが、競争で優位に立つための強みと見識を身につけることを願っている。

電車に乗ればたくさん見かけるひたすらスマホに夢中な若者が使っているのはGoogle、Apple、facebook、amazonが大半。自分の生活が四騎士にどっぷりで彼らの売り上げに貢献しても、四騎士が利用者を養ってくれるわけではないのですよ。この四騎士から若者が搾取されるだけの構図はが存在するが、GAFAはごく少数の雇用しか生んでいない。雇用者は4社合計で41万8000人だけなのだ。この部分を引用します。この部分は本書の核心でしょう。

四騎士は合計41万8000人の社員を雇用している。これはミネアポリスの人口と同じだ。四騎士の公開株式の価値は合計で2兆3000億ドルである。つまりこの第二のミネアポリスは、人口6700万人の先進国であるフランスの国内総生産に匹敵する富を所有しているということだ。この裕福な、”都市”が栄える一方で、ミネソタ州の他の都市の住人は、投資やチャンスや仕事をさがして歩き回るのだ。

GAFA 四騎士が創り変えた世界 p410

なるほど、四騎士に浸った生活もほどほどに勉強しなさいという著者のメッセージです。そうしないと普通の生活さえできないようなとんでもない事態になるぞ、と。問題はこのメッセージを届きたい層がGAFAに夢中で本を読まない層であるということ。若者にこのメッセージ届け!

さて、かくいう私もこのブログをappleのMacで書いて、googleのSEOを意識して、amazonのボタンを置いて、facebookでシェアしています。

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このブログを書いてる人
早川 朋孝 EC専門のSE
IT業界歴20年のエンジニアです。ネットショップ勤務で苦労した経験から、EC・ネットショップ事業者に向けて、バックオフィス業務の自動化・効率化を提案するSEをしています。
プロフィール
API連携の相談にのります
趣味は読書、ピアノ、マリノスの応援など
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