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『量子コンピュータが本当に分かる!』 武田俊太郎著

早川朋孝 早川朋孝
ITコンサルタント

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210727/k10013162861000.html
NHKのサイトに「1万年かかる計算を数分で行う」という見出しのニュースがあった。

量子コンピュータというのは今注目されている次世代のコンピュータで、多くの期待がかかっている。新しい技術が登場すると「何でも解決できる夢の技術」のようにメディアが騒ぐ。メディアはニュースを大衆へ分かりやすさを極大化して伝えるから、見出しのような「1万年かかる計算を数分で行う」という派手な見出しが舞う。しかし、そんなに都合のいい技術があるわけない。

そう考える理由はこの一冊にある。
『量子コンピュータが本当にわかる!』

『量子コンピュータが本当に分かる!』という本を最近読んだのだが、これを読めば量子コンピュータが夢の技術でも何でもないことがよく分かる。

  • 量子コンピュータはそもそも実用化の目処がたっていない。
  • 量子コンピュータで解ける問題には制限がある。どんな問題でも超高速で解けるわけではない。

詳しくは本書に譲るとして、今の量子コンピューターは一桁の計算さえ間違い得る性能で、安定して動かない。この一事でもって実用化の目処がたっていないことはよく分かる。例えるなら、今の量子コンピュータはレゴブロックを使って組み立てた車みたいなもので、実用に必要なのはF1マシンみたい量子コンピュータとのこと。

記事中に「マイナス270度余りに冷やして計算を行います。」とあるが、これは超伝導の性質を利用している。物質を絶対零度にまで冷やせば、物質中の原子や中性子の電気抵抗がなくなるため、そこを流れる電気が物質の量子に邪魔されずに干渉されることなく計算ができるから。こういう状態を用意しないと、量子ビットの正確性を担保できない。

超伝導の他に3つの量子コンピュータのタイプがあり、今は研究者が実用化に向けて競っている最中らしい。それぞれに一長一短があり、どのタイプが実用化に一番近いかまだ決まっていないし、その4タイプ以外が出てくるかもしれない。そんな状態なのだ。

実用化されるかどうかさえ分からない量子コンピュータだけど、実用化されない証拠もない。過剰な期待をせずに待つことにしよう。

ちなみにIBMが公開している「IBM Q Experience」という5量子ビットの量子コンピュータを誰でも使えるようです。
https://quantum-computing.ibm.com

最後に『量子コンピュータが本当に分かる!』について補足をする。とても分かりやすく書かれていて、中学レベルの数学と理科を理科している人なら簡単にすぐ読めます。

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このブログを書いてる人
早川 朋孝 EC専門のSE
IT業界歴20年のエンジニアです。ネットショップ勤務で苦労した経験から、EC・ネットショップ事業者に向けて、バックオフィス業務の自動化・効率化を提案するSEをしています。
プロフィール
API連携の相談にのります
趣味は読書、ピアノ、マリノスの応援など
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