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レンタルサーバーでWordPressを運用している人に伝えたい仮想環境のメリット

早川朋孝 早川朋孝
EC専門のSE

ウェブデザイナーやフロントエンジニアで、自分でレンタルサーバーを借りてWordPressでブログを書いたり、テーマの設定ファイルをいじっている人は世の中にはたくさんいることでしょう。レンタルサーバーを使ってWordPressを運用するのは安く気軽に利用できて初心者が利用するには向いていますが、レンタルサーバーという性質からやりたことにはどうしても限界があります。また、プラグインでバグがあったりした場合にエラーから抜け出せなくなる可能性もあります。せっかく定期的に記事を書いて固定の読者もついている状態でそうなったらかなり痛い。私なら泣いちゃいます。

こういう悲惨な状態を回避するにはどうすればいいか?

そのための一つの方法として、ローカルマシンでWordPress環境を構築するという選択肢があります。ローカルマシンとは普段みなさんが使っている手元にあるパソコンのことです。たいていはWindowsかMacでしょう。そのパソコンの中に仮想のマシンをインストールして、ウェブサーバーを再現できるのです。

「え?仮想マシンって何?」という人は多いでしょう。
イメージできますか?そういう人のために、仮想マシンについて簡単に説明します。

仮想マシンとは

あなたはきっとパソコンを1台はもっているでしょう。そのパソコンは物理的には1台です。物理的に1台のパソコンにMacとかWindows(まさかLinuxという人はいないでしょうが)など一つのOSが入っている。そう、1台1OSが原則なのです。しかし、世の中には横着でかつ頭のいい人がいて、「物理的に1台のマシンの中にOSが2つ以上あってもよくね?そうすれば1台のマシンで色々と実験できて楽じゃん、何より安くすむよね」と思いついて、そしてそれを実現したのです。それが仮想マシンです。

この仕組みを使えば、1台のパソコンの中に複数の異なるOSを再現できます。ソフトウェアの力で、あるパソコンの中にあたかも別のパソコンがあるかのような環境を構築できるのです。これが仮想(バーチャル)と呼ばれる由縁です。本来なら2台のマシンを用意するところ1台で済むのだから、コスト的に大助かり。場所もとらずにすむ。考えた人は天才です。いや、思いつくだけなら難しくないけど、実現するのはすごい技術力。帽子をかぶっていなくても脱帽しちゃう。

VPSとかVPNについて

仮想マシンと同じ発想は他にも流用され、VPSとかVPNと呼ばれるサービスがまさに同じ発想でつくられたものです。VPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)はコロナ禍でのテレワークをしている人なら聞いたことがあるかもしれません。社外にいながら、あたかも会社のローカルネットワークにいるかのように作業ができる技術です。本来なら専用回線が必要で、これにはとんでもない金額がかかるところ、ソフトウェアの力によりあたかも専門回線をひいてるかのような環境を実現しているのです。

VPSもそう。「専用サーバーは欲しい。でも高いから無理!」という要望が世の中にはたくさんあって、「じゃあスペックは専用サーバーに比べれば見劣りするけど仮想サーバーでいい?それなら安く用意できますぜ、だんな!」と、ソフトウェアの力であたかも専用サーバーを使えるかのようなサービスを、さくらインターネットとかカゴヤなどがサービスを展開しています。

ソフトウェアの力で物理的な制約を取り払った、これがこの記事で伝えたい「仮想」の意味です。余談ですが、言葉の背景にある豊富な文脈を理解すれば、仕事をする上で提案の幅が広がります。「仮想マシン?ああ、なんとなく知ってるよ」という程度では底が知れてます。職場からすぐに消える人って、こういうタイプじゃないですか?一方、開発会社のできる営業担当者なら臨場感たっぷりにこういった専門的な用語をお客さんに熱く語れたりします。

無料で使えるVirtualBoxとVagrant

さて、ローカルマシンに仮想環境を構築するのに必要なツールの代表格はVirtualBoxとVagrantです。VirtualBoxは仮想マシンのツール、Vagrantは仮想マシンを便利に使うためのツールと捉えておけばいいでしょう。どちらも無料で利用できITのエンジニアには必須のツールなのですが、この恩恵をエンジニアの手にだけとどめておくのはあまりにもったいない。フロントエンジニアやウェブデザイナーが仮想環境を業務で使うメリットは十分にあります。

そして、VirtualBoxはなにもWordPressをローカルマシンに再現するためだけにあるわけではなく、色々な使い方ができます。例えばMacの中にWindowsを再現することだってできます。実際わたしはそうしていて、Macを使いながら、同じ画面で同時にwindowsを開き、windowsでしか使えないアプリを開くなどして快適なPCライフを送っています。

WordPressをローカルマシンに再現するというのは色々な選択肢がある中の一つに過ぎますせん。このことから仮想マシンの利便性がよく分かると思いますが、ここでは仮想マシンにWordPressを再現することに焦点を絞って話しを進めます。

VirtualBoxをローカル環境にインストールするのに必要なスペック

あるOSの中に別のOSを入れることから、メモリがたくさん必要であることは想像に難くないでしょう。いまどき仮想マシンを動かすには目安として最低でも8G、快適に動かすには16G以上必要です。ちなみに私はやったことないので正確には分かりませんが、4Gでは動作が鈍くほぼ確実に不愉快な思いをします。VirtualBox以外動かさないという制約がつけばいけるかもしれませんが、そんなの現実的ではないでしょう。したがっておすすめしません。

仮想マシンでWordPressをローカル環境に構築するメリット

すでに書いた通り、仮想マシンを使ってWordPressをローカル環境に構築するのにはたくさんのメリットがあります。以下にそれを整理してみましょう。

  • 仮想マシンのデータを元に将来的に専用サーバーに移行できる
  • 一般公開していないので、WordPressをゴリゴリ実験できる
  • 公開前に事前に確認できる
  • 本番のバックアップになる。ローカル環境がMacならtimemachineで二重バックアップになる
  • ネットワークを介さないので、メモリされあれば表示が速い。つまり快適にWordPressの動作や表示の確認ができる
  • ネットが止まっていても作業できる
  • 別サーバーを用意するよりはるかに安くすむ

「将来的に専用サーバーに移行できる」はおおきなメリットの一つです。仮想マシンのWordPressをまるごと別のサーバーの引っ越すことができます。そしてさらに大きなメリットは色々と実験できることです。PHPのプログラムを自作した、新しいプラグインを試す、今まで使ったことのないウェブサーバーの機能を使ってみるなど色々な実験ができ、いじっているうちにあなたのうちに眠るエンジニア精神が覚醒してしまうかもしれません。

デメリット

  • 仮想マシンが物理的な資源(主にメモリ)を共有し動作が重くなる
  • インストールの難易度が一般的には高い

いっぽうデメリットは「パソコンの動作が重くなる」これに尽きますが、こんなデメリットは数々の魅惑的なメリットの前に消し飛びます。15年以上前、私自身がレンタルサーバーを使ってMovable Typeでウェブサイトを運営していたことがあります。そのときの失敗や苦労が今は仮想マシンという選択肢で回避できるのだから便利な世の中になったものです。

例えば、MovableTypeで何百ページもの静的ページを数十分もかけて出力した後、間違いがありもう一度やり直しするといったことが何度もありました。

どうですか、ローカルマシンにWordPressを構築したくなったでしょう?では、次回は実際にローカル環境にVirtualBoxをインストールしてみましょう。

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このブログを書いてる人
早川 朋孝 EC専門のSE
IT業界歴20年のエンジニアです。ネットショップ勤務で苦労した経験から、EC・ネットショップ事業者に向けて、バックオフィス業務の自動化・効率化を提案するSEをしています。
Web運用の経験もあり、アクセス解析、広告運用が得意で、広告APIとプログラムとの合わせ技で並の広告代理店にはできない提案が可能です。
プロフィール
API連携の相談にのります
趣味は読書、ピアノ、マリノスの応援など
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