ゲイが人口に占める割合はどれくらいか知っていますか?
多くの人は「あなたはゲイですか?」のような繊細な質問に対して、アンケートでは正直に答えないんです。そのアンケートがたとえ匿名であっても。まぁなんとなく分かりますよね。しかし、そんな秘密をgoogleに人は自分からカミングアウトするのですよ。人が正直に検索することで今までより精度の高いデータが得られ、ゲイ人口の真実に近い割合が分かるようになったのです。本書はgoogleの元データサイエンティストが暴露する、驚愕のビックデータの世界。
例えばトランプが大統領になるような、誰も想像もしなかったことが現実に起きるとみんなびっくりするけど、実はそれにも徴候があったと著者は言うのだ。どんな徴候かというと、人々が熱心に「トランプ」と検索し、その回数がヒラリーより多かったらしい。みんな「トランプが大統領なんてあり得ない」と口を揃えていても、検索は真実を物語るのですね。
「目は口ほどにものを言う」という表現が日本にはあるけど、現代なら「目」は「検索」に置き換えられます。興味深いのは、この秘密を見つけた人はビジネスで大成功を収めていることです。例えばFacebookを作ったザッカーバーグはその一人で、Facebookはこんな感じで始まった。
- 二人の学生の顔写真をウェブで比較できるようにして、どちらがより「hot」か学生にWeb上で投票させる。
- この行為は非難の嵐にあいサイトはすぐに閉鎖されたが、わずか数時間の間に450人が閲覧し、2万2千回も投票された。
ザッカーバーグは重要な秘密を見出した。人は、腹立たしい、不快だと言いながら、それでもクリックする。
誰もが嘘をついている p179
Facebookと同じく、ネットフリックスも似たような秘密を見つけた。
ネットフリックスも似た教訓を早期に学んだ。人の言葉を信じるな、行動を信じろ、だ。
かつて同社のサイトでは、ユーザーが今は時間がないがいずれ見たい映画のリストを登録できた。こうすれば、時間ができたときにリマインド通知してやれるからだ。
だがデータは意外だった。ユーザーは山ほどこのリストを登録したのに、後日それをリマインドしてもクリック率はほとんど上がらなかったのだ。
ユーザーに数日後に見たい映画を登録させると、第二次世界大戦時の白黒の記録映画や堅い内容の外国映画など高尚で向学心あふれる映画がリスト入りする。だが数日後に彼らが実際に見たがるのは、ふだん通り、卑近なコメディや恋愛映画などである。人は常に自分に嘘をついているのだ。
この乖離に気づいたネットフリックスは見たい映画登録をやめ、似たような好みのユーザーが実際に見た映画に基づいた推奨モデルを作りだした。ユーザーに彼らが好きと称する映画ではなく、データから彼らが見たがりそうな映画を提案するようにしたのだ。その結果、サイトへのアクセス数も視聴映画数も伸びた。
誰もが嘘をついている p180
こういう事例を見ると、検索エンジンは現代の告解と言えると気づきますね。本文には<人は苦しいとき、グーグルに告白する。p168>とありますが、まさにそういう時代なのです。本書には他にも興味深い事例がたくさん出てきます。例えば、借金を返す人と返さない人の言葉の違いがビッグデータから明らかになります。人が融資サイトで申し込む際、理由や返済見込みを短い文章で投稿する必要があるのですが、その文章を分析したところ、面白い違いが明らかになりました。
返す人の使う言葉 | 負債なし、税引き後、学卒者、低利率、最低支払額 | |
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返さない人の使う言葉 | 神、お返しします、病院、約束します、ありがとうございます。 |
返す人の使う言葉には最低限の金融の知識があることが分かる。一方返さない人は「お金はお返しすると約束します、神よどうかお助けください」とか、「親類が病院に入っている」という文章が多いそうだ。なるほど、さもありなんと思いますね。こういうデータが明らかになることで、これからは申し込み段階でAIが機能し、おかしな文章を投稿した人は最初からはじかれてしまう。私たちが今いきる世界は、すでにそうい世の中なのです。
セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 著 酒井泰介訳