あなたの会社にいるこんな人、ひょっとしたら発達障害かもしれません。
発達障害に関して、もっともよく耳にするのは、「アスペルガー症候群」という疾患名である。よい風潮とは思わないが、マスコミで発達障害を扱う頻度が増えるにつれて、昨今では、対人関係が苦手な人をすぐに「アスぺ」と決めつける傾向も存在する。
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2004年6月に起きた佐世保小6殺人事件以来、マスコミが盛んに報道し有名になったアスペルガー症候群。その実態についてほとんどの人が正しい知識がないにもかかわらず、発達障害についてはなんでもアスペルガー症候群とレッテルを貼るという風潮がある。
著者はこんな状況に危惧を抱いたのか、本書でアスペルガー症候群や発達障害についての専門家として啓発に努めている。新書の価格ながら正しい知識を得られるお得な本。
あなたやあなたの周囲の人が以下のようなことに悩んでいるなら、一読する価値はある。
- 極端に空気が読めない
- いつも同じ失敗を繰り返す
- あることに対して異常なまでに極端なこだわりがある
- 会社や学校に尋常じゃない困ったちゃんがいる
- 私コミュ症かも?
- 会社になじめずひきこもっている
あなたがもし、あなたの子供が発達障害かもと思って不安に感じているなら、スマホで検索して出てくる怪しいページに書かれいることを信じてはいけない。本書を読みましょう。なぜなら発達障害に関しては色々な言説があり、専門家でも誤診したり、間違えたりする。
対人関係の障害という所見のみで発達障害という診断をすることは明らかに行き過ぎであり、「変わり者」や「風変わりな行動をとる人」を即「発達障害」と決めつける風潮には注意する必要がある。
逆に、過小診断もしばしば見られる。うつ病など他の精神疾患と誤診されている場合や、発達障害の存在を見逃されまったく問題がないとされるケースも珍しくない。
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発達障害に関して専門家でもこんな状況なのだから、素人のあなたがネットで調べて出てきた内容の正誤を判断できるわけがない。だから発達障害で悩んでいるなら、専門家による書籍で正しい知識を仕入れるほうが、ずっと安心できる。
本書は新書なので、一般にも理解しやすいように書かれている。難解な用語や前提知識は不要。また最後まで読み進められるよう、専門家だからこそ知っているような豊富な事例が紹介されている。
例えばルイス・キャロルが発達障害だった可能性や、ギボンの「ローマ帝国興亡史」を丸暗記しているけど知能は10歳の人のエピソードなど、誰でも興味を持って最後まで読める。
「発達障害」とか「アスペルガー症候群」はマスコミの影響で一般に流布して言葉なのでなんとなく知った気になりがちだが、実際は何も理解しておらず、誤解していたり思い込みが混じっている。本書を読むことで少しでも正しい知識を得たい。