地球上でいちばん繁栄している生き物が何かというと「それはネコちゃんだ」。こう書くと「いやいや人間でしょう」と思う人もいるだろう。でもね、この本を読むと、そうは言っていられなくなるの。
だって考えてほしい。ネコちゃんは獰猛な野獣性を保ったまま人間と共存している。ネコちゃんは犬のように何かに役立つわけではない。犬は防犯や、狩猟に役立つけど、ネコはただそこにいるだけ。お腹が空いたらすりゴロゴロよってきて、毛づくろいして、寝る。それだけ。たったそれだけなのに、人間にこよなく愛され、無条件で安全と食を得るという最高の特権を得ている。一説ではその数6億匹という。果てはインターネットにまで進出して、バーチャル空間でも愛されている。まさに題名通り、猫は地球を征服していると言えるでしょ。
内容紹介
ネコちゃんと人間の関係はたぶんあなたが思っているより長い。ず〜〜っと大昔は人はネコ科に食べられる存在だった。初期人類が肉を食べた最古の証拠は340万年前にさかのぼる。その経緯を簡単にまとめると、人は大型のサーベルタイガーが食べ残した肉の味を覚えた。そして肉をもっと食べたくて、道具作りや狩が上達したらしい。
一部の人類学者は、私たちを最終的に人間にしたものは肉食だったと論じている。それはたしかに決定的な一歩だった。
やがて人が定住を始めると、今度は逆にネコちゃんが人の食べ残しを狙って、人の周りに集まってきた。そして、その後ネコちゃんはその野生の本性を残したまま人間と共生するようになる。ネコちゃんがネズミ捕りに役立つなんてのは誤解されたイメージでしかない。たいていのネコちゃんはわざわざネズミ退治をしない。もっとも昔飼っていたうちのネコが外からねずみを捕まえてきたことはあったので、まったく捕らないわけではないけれど。
そして人間は地球上の至るところに進出し、ネコちゃんもそれについていった。簡単に言うと、人間に同伴するネコちゃんってことね。結果としてネコちゃんは外来種としての強力なハンターになった。例えば、もともとネコちゃんがいなかった孤島にネコちゃんが進出することで、その孤島の生態系は大きく崩れる。というのも狩が達者で繁殖力も強いネコちゃんは、他の生物にとっては大きな脅威になった。
こうやって地球上のいたるところを征服したネコちゃんは、同じネコ科のライオンより成功していると言える。
感想
本書中にある<反社会的な超肉食動物>という表現がネコちゃんの本質をよく表している。ネコちゃんを飼っている人は知っているだろうけど、ネコちゃんは孤高な生き物で、自分より小さい生き物を無邪気にもてあそぶ。もしネコちゃんが人間より大きければ、人間をもて遊びます。それくらい野生を残しているのがネコちゃんなの。原題は「居間にいるライオン」だし。
本書を読むと、犬と違い何もしないのに人間に愛される保護されるという特権を得た幸福な生き物としてのネコちゃんが、どういう過程を経て人間と共生するようになったのかがわかり、ネコ好きには興味深い本だろう。参考文献も多く紹介してあり、本書を起点にしてネコ本情報が広がるのも嬉しい。あ、本書を読んでも、ネコがどうやってゴロゴロ鳴らしているのか、謎のままだけど。