馬鹿な上司でほとほと困り果てている人、世の中には多いことでしょう。いくら成果主義が導入されているとはいえ、日本の伝統的な製造業の多くは年功序列の会社がまだまだたくさんあります。そういう状況では、馬鹿な上司やアホな先輩にあたってしまうとどうしようもありません。相手がどんなにばかちんな人であっても、なんとか折り合いをつけるしかない。『恐怖の男 – トランプ政権の真実』は、トランプという馬鹿の極限のような人が大統領になってしまい、側近がなんとか難しい政治状況や諸外国との利害関係をトランプに説明しようとするが、うまくいかず四苦八苦する涙ぐましい物語です。この記事ではトランプの側近がトランプとどう向き合っているかを知ることで、馬鹿な上司とどう付き合うかという類否的な考え方を紹介します。
トランプが大統領選挙に立候補し、ヒラリー・クリントンに選挙で勝ち、当選後はシリアにミサイルを打ち、金正恩を「ロケットマン」とツイッターで呼び、中国と関税とやり合う一連の出来事が記述されていますが、いずれも最近のニュースなので記憶している人も多いでしょう。その舞台裏を知ることができます。
トランプ大統領は反知性主義の権化
作家の佐藤優さんは「実証性や客観性を無視し、自分の見たいようにしか世界を見ようとしない姿勢」を反知性主義と名付けました。要するにおこちゃまと言い換えてもいいでしょう。『恐怖の男 – トランプ政権の真実』を読むとトランプがいかにこの反知性主義、つまりおこちゃまであるかが分かります。衝動的にツイッターで自分の言いたいことを立場もわきまえず一方的に主張し、一日の多くをテレビに費やし、自分の都合の悪いことに対しては「嘘だ」という。こんな人が大統領になってしまったのだから、まともなアメリカ人のショックも相当なものだったのは想像に難くありません。
トランプの大統領就任から6ヶ月間、トランプがメディアにどれほど時間を費やしているかに、だれも気づいていなかった。ぞっとするほど多い。トランプは午前11時ごろにならないと、仕事をはじめない。1日に6時間か8時間、テレビを見ている。テレビばかり見ていたら脳がどうなるか、考えてみるといい、とバノンは疑問を投げた。
バノンは、トランプに「そのろくでもないものを消せ」と何度もいったと、主張している。『恐怖の男 – トランプ政権の真実』p419
昨日のアジアカップ決勝での敗戦はショックだけど、トランプが大統領になった時、まともなアメリカ人が受けたであろう衝撃に比べればきっと大したことないだろうな。
— 早川朋孝@ウェブ運用の専門家 (@ShiroTruffe) 2019年2月2日
さて、こういう上司を持ってしまった人もショックでしょう。しかし、仮にそういう人が上司になってしまったら、折り合いをつけるしかありません。いろいろな側近が同盟国との重要性を説きますが、トランプは「なぜアメリカが金を払うんだ、同盟は破棄しろ」の一点張りです。側近が同盟を破棄することのデメリットのほうが大きいと数字の根拠でもって説明しても、トランプは聞き入れません。やがて側近は、重要な書類をトランプに回さなくなったり、トランプのデスクから持ち去るようになります。例えば、同盟国との関係を破棄するような書類に、うっかり大統領の署名でもされたら大変なことになるからです。
この物語から分かるように、あなたの上司がどうしようもない馬鹿なら、周囲と協力して上司を蚊帳の外において仕事を進めるのが吉でしょう。または上司には限りなく形式的な役割だけを演じてもらうとか、そういう努力が必要です。しかし、それでも厳しい、あまりに馬鹿すぎて、やっぱり厳しいという場合もあるでしょう。例えば主張をコロコロ変えるとか、そういう場合ね。
「もうひとつの大きな問題は」ボシーがいった。「投票記録です」
「投票記録がどうした?」
「どれくらいの頻度で投票していますか?」
「それがどうした?」
「つまり」ボシーはいった。「共和党の予備選挙のことです」
「毎回投票している」トランプが、自信たっぷりにいった。「18歳か20歳のときからずっと」
「それは事実ではありませんね。あなたの投票の公式記録があるんですよ」議会の調査員のボシーは、記録をごっそり用意していた。
「どういう投票をしたか、わかるはずがない」
「そうではありません、どういう投票をしたかではなく、どれほどの回数、投票したかです」
「トランプは政治の基本事項を知らないのだと、バノンは気づいた。
「毎回、投票している」トランプはいい張った。
「じっさいは、これまでのあいだ、あなたは予備選挙では一度しか投票していません」ボシーが、記録を読みながらいった。
「嘘っぱちだ」トランプはいった。「大嘘だ。私は毎回投票に行く。投票した」
「一度の予備選挙で投票しただけです」ボシーはいった。「1988年あたりの共和党予備占拠で」
「そのとおりだ」トランプは、すかさず180度方向転換した。「ルディに投票した」。1989年の予備占拠で、ルドルフ・ジュリアー二はニューヨーク市長に立候補した。「そこに書いてあるのか?」
「ええ」
「なんとかなるだろう」トランプはいった。『恐怖の男 – トランプ政権の真実』p24
あるいは、すごい嘘をつく上司の場合は、どうだろう。これも厳しいですよね。<「トランプはプロ級の嘘つきだ」>という表現が本書には何度か出てきます。主義主張に一貫性がない場合も、同様です。うーむ、これは蚊帳の外におくだけでは対処できるものではないでしょう。ではどうすればいいか?それも本書に書いてあります。トランプの側近はことごとく辞めていきます。そして馬鹿な側近、トランプに取り入ろうとする側近だけが残ります。だからあなたも、極端に馬鹿な上司をもった場合は、辞めるのが一番です。「家族もいるし、そんなに簡単に辞められるわけないでしょ」と言う人もいるかもしれない。その場合は毎日いやいや通勤してください。