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なぜ私たちは明らかな「敗戦」を「終戦」と表現するのか?

書評・読書ノート

先の大戦で日本人は敗戦という取り返しのつかない大きな失敗をした。この敗戦により天皇制の解体も十分にありえるくらいの日本の危機でした。日本は占領軍に占拠され、対ロシアの前線基地として扱われ、今も沖縄にはアメリカ軍基地が集中しています。

敗戦を終戦と表現する理由

これほどの国体の危機に直面すると、人は誰もが自分に責任があることを認めたがらない。アメリカはその日本人の心理をついて「あなたちは日本国民は日本政府に騙されていたのです」と宣伝工作をした。なぜそんな工作をしたのかというと、戦後の統治をしやすくするためなのだが、日本人はその宣伝工作にまんまと乗せられた。というより自分から受け入れたと言っていい。敗戦という失敗に目をつむり、「自分たちが日本政府に騙されたから」という神話を受け入れたのです。

それが「終戦」という表現によく出ていますね。日本政府が勝手に初めた戦争が自然と「終わった」のだ。しかし当然戦争が自然に終わるわけもなく、当時の日本政府がボツダム宣言を受諾し、9/3にミズーリ号の艦上で調印して敗戦したのである。以上が「敗戦」が「終戦」と置き換えられたあらましです。

現実をみるには冷静な筆致の本を読もう

この厳然たる敗戦にもかかわらず、戦争から73年も経過する今なおNHKや大手新聞などのメディアは「8/15は終戦の日」と表現しており、誰もがそれを当然と思っています。この状況をおかしいととなえる論がたくさんあるのですが、今回はそんな中から優れた一冊を紹介します。白井聡氏の『永続敗戦論』です。冷静な事実を列挙する筆の運びには説得力があり、一読に値します。

白井聡氏は、戦後、つまり平和と繁栄の時代が終わり、そして戦争と衰退に転化した。原発事故でによって欺瞞で覆われていた日本の地金が露呈し、本音モードに入った。今まで、本音を否認してきたが、それを隠しきれなくなってきた、と言います。まず原発事故によって欺瞞で覆われていた日本とはどういう意味か、具体的に本文を引用します。

まず、事故の発生に際し、政府は、原発周辺住民の避難に全力を尽くさなかった。それを最も端的に物語る経緯は、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)のデータが国民に公表されなかった、という事実である。しかもそのデータは、国民には隠される一方で、米軍にはしっかりと提供されており、菅首相(当時)はSPEEDIの存在そのものを「知らなかった」とシラを切り続けている。

永続敗戦論 p29

上記引用は原発事故なので7年前のことですが、今も安倍さんは森友、加計学園でてきとうにシラを切ってなんでも強引に押し進めようとしています。つまり民主党でも自民党でも政治家の誠実性のなさという点からすると、どっちも変わらないのです。さて、こんな日本の状況を生んだものは何か?それは敗戦の否認です。

純然たる「敗戦」を「終戦」と呼び換えるという欺瞞によって戦後日本のレジームの根本が成り立っていると言っても過言ではない。

永続敗戦論 p63

永続敗戦とは、上の引用のように、敗戦を否認しているが故に際限のない対米従属を続けなければならず、深い対米従属を続けている限り、敗戦を否認し続けることができる。敗戦を否認するがゆえに敗北が無限に続く。アジアに対しては敗北の事実を認めようとせず中国、韓国とはいつまでもぎくしゃくしたまま。このような敗北の否認を持続させるためには、ますます米国に臣従しなければならない。隷従が否認を支え、否認が隷従の代償となる。永続敗戦とはこういう意味です。

この現実を見ようとしない日本人の姿勢が、人口140万人で国土は日本の0.6%しかない沖縄に基地を押し付ける構図を生んでいまう。本州に住む多くの人が日常的にアメリカ軍基地を目にしなければ、敗戦という事実から逃げられる。「沖縄だけにおしつけるのはおかしい」と故翁長知事が怒るのも当然でしょ。

本書を読むと日本の置かれた状況に暗澹たる気持ちになりますが、声をだしていくことこそ重要だと思います。「終戦」というと聞こえはいいけど、実際は「敗戦」でしょ。まずは「終戦」という表現を辞めることから始めたらどうだろう。新聞社の人、メディアの人、もしこの記事を読んでいたら上司に「終戦という表現はやめましょう」と打診してみてください。確実に一蹴されると思いますが。

このブログを書いてる人
早川 朋孝

業界15年ウェブ運用が専門のITエンジニアです。サーバー保守やアクセス解析などフロントからバックエンドまで何でも対応します。データと科学的エビデンスを重視し、月140時間は読書します。ウェブ業界の裏側や読書で学んだこと、社会的なことなどをブログ記事にします。ネコ好きなタバコ嫌いで、明治学院フランス文学科卒という文系出身のエンジニアです。マリノスファン。

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